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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第119話 有希
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レートの特徴は初速と終速の差が極めて少ない事。故に、バッターは差し込まれる事を嫌い、早い段階でストレートか、それとも変化球かの見極めを要求され、結果、予測が外れて凡打に終わる事の多い球質を持つ。
 そして、アンダースローと言う投球フォームは一番、ボールが重力の法則に従い落ちる事のない投球フォーム。
 通常、オーバースローから投じられた球が低めのギリギリいっぱいを狙えば、その落差は一メートル以上。逆に、アンダースローから低めいっぱいを狙うと落差は最大でも四十センチ程度。

 つまり、何が言いたいかと言うと――

 それまで一切、動く事のなかった自称リチャードの黒いバットが空を切った風切り音がマウンド上の俺の耳にまで届く。そのバットが空を切った位置と、俺のボールの通過した位置の差は十センチ以上。
 そして、そのまま浮かび上がるかのように更に高い位置で有希の構えたミットに吸い込まれる白球。

 ミットを叩く乾いた音。そして、一塁側の応援団の上げた黄色い声援。
 そうして――


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