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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第119話 有希
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示に従う以外の選択肢はない。素直に首肯き――
 初球はあっさり見逃してワンストライク。
 二球目インコースにボールのカーブ。これでワンエンドワン。

 この感覚でツー・スリーまで持って来る。その間、自称ランディくんは一度もバットを振って来る事はなし。今までもあまりバットを振って来ないバッターだったので、この状況は然して異常な状況とは言えない。
 但し、故にこの場に俺たちに有利な陣が敷かれた事が、ヤツの能力にどの程度の影響を与えて居るかが分からないのが不安材料なのですが……。

【勝負球はストレート】

 有希からの【念話】は最初に頼んだ通りの配球。
 背中から吹きつける冷たいはずの風が何故か非常に心地良い。

「追い風か。こんなトコロまで俺の方が有利に働くのやな」

 頭に巻いた包帯が風に(なび)く。事、ここに至ってようやく、ハルヒの意図した絵が出来上がったと言う事か。

「ようやく本気になったようですね」

 真っ直ぐに俺を見つめた後に、何か寝惚けた事を言い出す自称ランディくん。そう、それは寝言。何故ならば、俺は何時でも全力……の心算だから。もし、本当に戦いの際の俺がチャランポランに見えたのなら、それは俺が醸し出している雰囲気に騙されて居るか――
 もしくは俺自身が未だ完成されていないが故に、全力が安定していないだけ。

 バッターボックス内のニヤケ男が何を言おうと無視。一瞬、ハルヒに視線を向け、
 大きく振り被る。胸を張り、一度、左脚に体重を乗せ――
 そこから右脚をプレートへ。ゆっくりと体重を右脚に移しながら身体の向きをホームベースから三塁へと。

 ここまでは普段通りの投球フォーム。
 そしてここからが違う。

 左脚を大きく上げ、右脚に完全に体重が乗った後、上半身を完全に折り曲げる。グローブでバランスを取りながら、右腕は頭よりも高い位置にテイクバックを取る。
 重心は普段のオーバースローで投げる時に比べて、更に低い位置に。
 普段よりもかなりゆっくり目に左脚を前へ。ほとんど二段モーションだと言われかねないぐらいしっかりと右脚に乗せた体重も合わせて前へと掛けて行く。腕は出来るだけ低い位置……手に土が着いても不思議ではない位置から強くしならせるように。

 そう、これはアンダースロー。
 普段よりもスナップを効かせ、長い手足を存分に使った投法。

 リリースされたタイミングは、オーバースローで投げられた時よりも一拍分以上遅く、しかし、球速に関しては今日、投げたストレートの中では最速!
 しっかりとした大きなフォロースルー。

 地を這うような高さから投じられたストレートはまるで浮き上がるかのように、一切の威力を減ずる事なく中腰に構えた有希のミットに!

 そう、俺のスト
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