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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第119話 有希
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にバットを戻し、再び振り抜いたバットが今度は俺の投じたシンカーを完全に捉えて――

 打球はレフトの頭上を遙かに超えて行った。

 これは、おそらく一度起きて仕舞った事象を無理矢理に歪めて、自らの都合の良い歴史に書き換えた行為。ただ、俺や有希、その他の人物に直接関わる歴史を弄った訳ではなく、投げられたボール自体の未来を書き換えた行為だと思うのですが……。
 確かに何を考えて居るのか分からない相手ですが、ヤツ……特に自称ランディに対応すると思われる邪神は、そんなあっさりと勝負が着くゲームは好みではないでしょう。それに、俺や有希、まして綾乃さんまで巻き込んだ運命を簡単に弄られるとも思えません。それよりは、ボールが打ち返されなかった未来から、打ち返された未来に書き換える事の方が楽ですし、短期的な未来は同じような状況をもたらせる事が可能となるはずです。

 つまり、現状ではかなり不利になったのは事実ですが、それでも結末が決まっているとは限らないと言う事。
 彼女……長門有希と言う名前の少女が、責任感が強い人間である事は理解して居ますが、あまり内向きに過去の失敗を悔やみ、自分を責め続けても意味は有りません。
 確かに責任感が皆無で、過去の失敗から何も学ばないとか、他人にすべてを転嫁して自分はまったく悪くない、と開き直る人間は論外ですが、彼女のように失敗を悔やみ続ける事は停滞を生み、そこから悪い流れを作り出す可能性もゼロでは有りませんから。

「取り敢えず、未だ四回攻撃出来る。この回に一点でも余計に返す事を考えようや」

 一歩分、余計に有希へと近付き、彼女の頭を軽くポンポンと叩く俺。彼女の髪の毛は俺の良く知っている()の蒼い髪の毛に比べると多少硬く、それにくせ毛。
 ただ、触り心地は良く、ふたりの間の些細な差など気にはならない。
 僅かな上目使いで俺を見つめる有希。しかし……これは少し洒落にならないか。

 あまりにも周囲を無視したバカップルぶりを晒す訳にも行かない。まして、有希が俺の相棒だと言う事を知っている人間はいない。
 答えに窮する代わりに、彼女に笑い掛けて彼女の視線に応える俺。
 大丈夫。未だ試合が決まった訳ではない。

「何を二人だけで話し込んで居るのよ」

 微妙な雰囲気を醸し出し掛けた俺と有希。その雰囲気を嫌った……のでしょうか。六回の裏の最初の打者。ウチのチームの一番打者が近付いて来る。
 ただ、何にしてもタイミングとしては悪くない。

「この回に一点でも余分に返す。バッテリー兼三番、四番が話して居たんや」

 未だ試合を諦めた訳ではないから。視線をベンチから俺たちの方に近付いて来るハルヒに移し、そう言葉を締め括る俺。
 現在は八対十五。得点は七点差。残された攻撃は後四回。三番の自称ラン
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