六十二話:プリンセシア
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子が甥のように利用されないように失踪した。
ビズリーはそれを追う事はしなかった。いくら、義理の父であるマルクスが匿っていたとはいえ警察ですら簡単に抑え込めるクランスピア社が探せば身重の女性一人探すのは訳はない。
だが、それをしなかったのは彼自身が心の奥底ではやりたくなかったからだ。
出来れば、どこかで名も顔も知らぬ息子と一緒に幸せに暮らしていて欲しかった。
だが、運命はどこまでも残酷に不幸をまき散らす。
後で知ったことではあるが、クラウディアはクランスピア社の追ってだと勘違いされたユリウスが誤って彼女を殺してしまったのだ。
その過程でルドガーは記憶を封印し、ユリウスは力を得るためにルドガーを家族にした。
その事実を知った時はあの時無理にでも連れ戻せばこんなことにはならなかったのではないかと僅かながらに後悔した。
だが、ルドガーを利用しないという選択を選ぶことは無かった。
例え、愛した妻たちが―――プリンセシアがそれを望んでいたとしても己の為すべきことに準じた。
「オリジン、今度こそ…今度こそ…っ! この拳を、お前に届かせる!」
愛を捨て、哀を背負った男の言葉はどこまでも重く底冷えする声だった。
全てを審判に狂わされた。いや、最初から狂っていた。
その事実が激しい憤怒の炎となり彼の体に無尽蔵に湧き上がる力を与える。
一度砕かれた意志を再び蘇らせる。
「ファイナルラウンドだ。勝った方が世界を創る」
全てを破壊しつくす怒れる拳が、炎すら焼き尽くす憤怒の意志が今。
二つの世界の頂点に立つ最強の力を得て、全てを終わらせるために審判を越えし者に襲い掛かる。
「待っていろ、ルドガー。前は負けたが、今度は父親としての威厳を見せてやる」
―――青い瞳が獰猛な輝きを放ち全てを飲み込む。
次元の狭間に、かつて静寂を求めた少女は戻ってきていた。
だが、今の少女にはこの空間は寂しいと感じられた。寂しいと感じることも出来なかった少女はある男との出会いにより感情を知った。
だが、そんな男はもうどこにもいない。だからこそ、この空間にある決意をして戻ってきた。
少女は静かに佇み、虚空の空を見つめる。するとその空を覆い尽くすように赤い影が差す。
その正体は巨大なドラゴン。
少女、オーフィスと対をなす夢幻を司る存在―――真なる赤龍神帝グレートレッド。
「違う。我は戦わない」
グレートレッドが戦いに来たのかと尋ねるとオーフィスは小さく首を振って否定する。
それをグレートレッドは以外に思う。
オーフィスはここから出て行く時に必ず自分を打破して静寂を取り戻すと言っていた。
さ
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