六十二話:プリンセシア
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「白音ー!」
「……どうしたんですか、姉様? そんなにはしゃいで」
塔城小猫こと白音は自身の姉が普段とはまた違ったハイテンションで自分の元に訪れたことに首を傾げる。
来るべき戦いに備えて自分達の殆どの者が鍛錬に励んだり、伝手にあたっている中でどこかしらどんよりとした空気が流れているのだ。
そんなことにも気づかない程バカな姉だったかと内心酷いことを考えながらも取りあえず話しだけは聞いてみることにする。
「じゃーん! これを見るにゃ!」
満面の笑顔で白音の前に差し出されたのは彼女の左手であった。
正確に言えばその手の薬指についている指輪だ。
それを見て白音は姉の身に何が起きたのかを理解して口を開く。
「……どこから盗んだんですか?」
「その反応は絶対可笑しいにゃ! 白音はお姉ちゃんのことをどんな目で見てるの!?」
「……冗談ですよ、姉様」
軽く辛辣なジョークを吐くあたり、彼女は苛立っているのかもしれない。
まあ、日頃からイチャイチャを見せつけられている身からすればまたかと思うのかもしれない。
だとしても、身内の幸福を祝福しないというのは彼女の性格的には考えづらい。
では、なぜ彼女はこうも辛辣な態度を取ったのかと言うと―――
「……このタイミングでのプロポーズは誰がどう見ても死亡フラグ」
「にゃははは。実は私も少しそう思ってたにゃ」
ルドガーが太すぎるフラグを立てたからである。
早い話が「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」である。
これが運の良い人間であれば、まだ楽観視が出来るのだがフラグを立てた人物は貧乏神が素足で逃げ出すレベルの運の悪い人間である。
悪い予感は必ずというほど当たるという嫌な未来予知能力を持っていそうな彼が立てたフラグはちょっとやそっとでは折れない。
「……いくらなんでもタイミングが悪すぎです」
「まあ、そういえばそうだけど……同じ険しい道を歩いて行くなら明るい未来が見えた方がいい」
「……そうですね」
黒歌の言葉に白音は目をつぶって静かに頷く。
同じ険しい道なら明るい未来が見える方がいいというのは真実だろう。
自分達は少し暗く考えすぎていたのかもしれない。
白音は肩の力を抜く様に息を吐き、目を開く。そして、ようやくではあるが祝いの言葉をかける。
「……おめでとうございます、姉様」
「ありがとう、白音」
妹からの祝いの言葉に本当に嬉しそうに笑う黒歌。
白音はそんな姉の様子にどこか遠い昔を思い出すような顔をする。
幼い頃に二人で無邪気に笑い合っていた頃が思い出され、少し感傷に浸る。
しかし、そんな感傷を壊すような発言が姉の口から飛び出して来る。
「もしかしたらすぐに白音も叔母になる
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