2ndA‘s編
最終話〜無慈悲なエンドロール〜
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それは慟哭であり、どうしようもない懇願であった。
途中で席を立ち、シャマルに掴みかかるような体勢になる。そこに暴力的な力強さはなく、あるのは打ちのめされ、弱々しく縋り付くような必死さだけだ。最後はもう絞り出すようなか細い声であった。
興奮したせいで傷が開いたため、包帯の白い面積が減り赤い面積が増える。頭部の包帯からもそれは見受けられ、灰銀の髪も少しずつ朱色に染まっていく。
腹の底に溜まっていた気持ちを言い切ったことにより、力が抜けたようにライはその場でへたり込む。
それを見ていた三人は言葉がなかった。
ここまで身を削り、そしてどこまでも自己というものをひた隠しにしてきたライが、泣き叫ぶように訴えてきたその姿に。
――何故、もっと早く来てくれなかったのか?――
――何故、もっと早くから夜天の書のデータを開示しなかったのか?――
――何故、八神はやてを救ってくれないのか?――
――何故、もっと違う方法を提供できないのか?――
言い始めれば際限なく湧き出してくる想い。それは今を最善と言い切れない人間の訴えであり、どこまでも身勝手な願いだ。
そしてそれを口に出すことができる程、非情になれる人間はこの場にはいなかった。
沈黙が続く。
既に語るべきことはないのだ。あとはもう決断をするか、決められずタイムリミットを迎えるかしかない。
ライの存在というモノが更に稀薄になり始めた頃、リインフォースが動きを見せる。
彼女はライと向かい合うように膝を折ると、彼の方に両腕を伸ばした。
(…………暖かい)
先ほど叫んだ時から、思考がほぼフラットになっていたライは包帯越しにぬくもりを感じる。それは怪我の存在を訴えてくるような熱とも、温めようとする暖でもなく、伝えようとする温もりであった。
「ありがとう」
その温もりを感じると同時に言葉が耳に入ってくる。
(あぁ…………やめてくれ…………)
鈍る思考の中、ライが視界の焦点を合わせると白銀の髪と黒い服、そして自信と触れている肌が見える。そこで初めてライはリインフォースに頭を抱えるようにして抱かれていることを認識する。
「私や皆の存在を背負おうとしてくれて」
彼女に先ほどの悲壮感はもうない。代わりに彼女の表情に浮かべられているのは強い意思。それは覚悟の現れだ。
「私に可能性を示してくれて」
そしてそれを表すように彼女は慈愛の笑みを浮かべ、慈しむように血に濡れた髪を優しく梳いていく。
「感謝なんて…………しないで、くれ」
「受け取ってくれなくてもいい。でも聞いてくれ。私は貴方と会えてよかった」
「っ」
ああ、もうだめだと思った時には、歯を食いしばりながら涙を流していた。
悲し
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