第二百十四話 家康の馳走その六
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その味がだ、これが。
「何と、これは」
「玄米に田楽に梅に」
「鯛は贅沢にしても」
「それでもですぞ」
「美味い」
「これはまた」
こう言ったのだった。
「どうやらこれは」
「素材がかなりいいのか」
「しかも料理をしている者の腕もよい」
「台所もまた」
「実に」
「当家で一番の馳走であります」
まさに、というのだ。
「これこそが」
「ううむ、料理は質素でも」
「その味が違う」
「これはまた」
「面白いですな」
「素材は選びました」
徳川の領国の中からというのだ。
「米も鯛も」
「そのどれもですか」
「全て」
「そして徳川家の料理人達の中でもです」
特に、というのだ。
「人を選びました」
「ですか、それで」
「この味ですか」
「いや、これはかなり」
「かなり美味です」
玄米に鯛、田楽に梅だけでもというのだ。確かに信長の開いた宴と比べると質素なものであるがだ。それでもだ。
「いや、これはまた」
「かなりの味です」
「それでは是非」
「どんどん召し上がらせて頂きます」
こう言ってだ、宴に出ている者達は家康が出した馳走を食べて飲んでいった。そうしてたらふく食ってだった。
信長もだ、家康に満面の笑みで言った。
「竹千代、見事じゃ」
「有り難きお言葉」
「実によい宴じゃった」
こう家康自身に言ったのである。
「まことにな」
「お気に召されて何よりです」
「御主らしい宴じゃったな」
「それがしはどうしても贅沢は出来ませぬので」
「そうじゃな」
「しかしです」
贅沢でなくとも、というのだ。
「ああすればです」
「美味になるのじゃな」
「そう思いましてでしたが」
「うむ、よく出来ておった」
信長も実際に味わったうえで言ったのだった。
「美味かったぞ」
「ではまた」
「うむ、頼むぞ」
今の様な馳走をと言う信長だった、そうしたことを話してだった。
そのうえで家康の宴も楽しまれた、それは公卿達にしても同じで満足していた。そうして安土で様々な宴が行われ。
織田家はこれから数年の政についても定めた、それはそれぞれの大名達の石高も細かく決め政の仕組みを整えるものだった。
そこまで整えてからだ、信長にだった。
林がだ、都に帰った公卿達からの言葉として伝えたことがあった。その伝えたことは一体何であったかというと。
「ふむ、幕府か」
「はい、どうかと仰っていますが」
伝えるのはこのことだった。
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