第二百十四話 家康の馳走その五
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「徳川殿が普段飲まれている酒か」
「ですな、まずはこの酒を飲み」
「それからですか」
「一口の後で運ばれてきますな」
「馳走が」
「この酒でわかった」
おおよそのことはと言う元親だった。
「徳川殿は飾られぬ」
「ありのままのご自身をですか」
「出されそしてですか」
「そのうえで宴をされる」
「そうしたおつもりなのですな」
「間違いなくな、では飲もうぞ」
その酒をというのだ。
「一口な」
「そして馳走ですな」
「そうなる」
こう答えてだった、元親は実際にその茶をまずは一口飲んだ。そして実際に一杯飲むとそこからだった。
その馳走が運ばれて来た、それを見てだった。
まずうは公卿達がだ、驚き唸る様な声をあげた。
「何と、これは」
「こうきたでおじゃるか」
「またこれは」
「凄いでおじゃるな」
「ほほう」
政宗もだ、己の前に運ばれて来たその馳走を見て笑って言った。
「これはよい」
「まさかと思いました」
「まさかこう来るとは」
片倉と成実も言う。
「徳川殿はまことにですな」
「飾らずに来られましたな」
「何も隠さずに」
「ありのままのご自身で」
「うむ、おかずは鯛にじゃ」
見ればどの者にも大きな見事な鯛が丸ごと焼かれて置かれている。
「そして味噌を焼いた田楽じゃ」
「はい、そしてです」
「さらに」
「飯じゃ」
その飯はというと。
強飯、即ち玄米をこれでもかと巨大な碗の上に有り得ないまでに盛っている。その盛り方は人の頭以上だ。
そしてその中央に梅干を置いている。それを見てだった。
誰もが大いに驚いてだ、こう言ったのである。
「これが徳川殿の馳走か」
「また凄いものを」
「玄米に鯛に田楽」
「そして梅とは」
「召し上がって下され」
家康は宴に居並ぶ者達にこう言った。
「最後には柿を用意しております」
「それが最後の菓子ですな」
「宴の後の」
「左様」
まさにそうだというのだ。
「それも用意しております」
「では今は」
「この馳走を口にし」
「そして、ですか」
「最後に」
「柿もお願い申す」
家康はこう返した。
「最後まで」
「ううむ、では」
「こちらも頂きます」
「そしてです」
「楽しませて頂きます」
宴に出ている者達は驚きつつもこう家康に応えてだ、そのうえでその玄米を中心とした馳走を食べはじめた。すると。
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