巻ノ二 穴山小助その十一
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「これはお頭」
「来られていたのですか」
「今こちらの方々を案内しようと思っていたのですが」
「熊を退治に来たのじゃが」
お頭を呼ばれたその鎖鎌を持っている男は三人に低い鋭い声で応えた。
「しかし鉄砲の音と何かが倒れる音がしたと思えば」
「わしが倒したぞ」
穴山は男に顔を向けて告げた。
「今しがたな」
「御主がか」
「うむ、そうじゃ」
「見ればもう死んでおるな」92
男はここでその熊の骸を見て述べた。
「それも右目に鉄砲の後がある、そして」
「わかるな」
「うむ」
男は穴山の手の鉄砲、その銃口から出ている煙も見て述べた。
「御主がやったな」
「わしは嘘は言わぬ」
「右目から脳を撃って一撃で倒したか」
「そこまでわかるか」
「見ればわかる、しかし口で言うのは容易いが」
しかしというのだ。
「実際にするのは難しい」
「そこからわしの腕もわかるな」
「御主、相当の手練じゃな」
男は穴山にはっきり言った、そして。
幸村と雲井も見てだ、こうも言った。
「そちらの二人も。共に武芸者の様じゃが」
「こちらの方はわしの主じゃ」
穴山は幸村を恭しく手で指し示して男に話した。
「真田幸村様じゃ」
「何と、この方がか」
男は穴山の紹介を受けて驚いて応えた。
「あの智勇兼備と名高い」
「そうじゃ」
「そうか、成程いい目をしておられる」
男は幸村の目も見て述べた。
「澄んだ、それでいて強い光を発するな」
「そうであろう、この方は間違いなく天下に名を馳せられるぞ」
「そうじゃな、わしもそう思う」
男は穴山の言葉に頷く、そして。
幸村達を案内していた三人がだ、ここで男に言った。
「お頭、それでなのですが」
「あっし等は真田家に誘われまして」
「その」
「そうか、なら仕えるがいい」
男は三人の言葉を受けてすぐにこう返した。
「真田家にな」
「許して頂けるんですか」
「賊を抜けて」
「そうして」
「何時までもここで賊なぞやっていても先がないわ」
男は三人に語った。
「だからじゃ、御主達も仕官先があるならそこに行け」
「ですか、では」
「これまでお世話になりました」
「いや、本当に」
「うむ、達者でな」
「よければ」
男と三人の話が一段落してからだった、幸村が言って来た。
「貴殿達も如何でしょうか」
「それがし達もですか」
「当家は今人を探していまして」
「だからですか」
「はい、貴殿達もどうでしょうか」
「お頭、ここはです」
賊の一人、男のすぐ右にいた者が言って来た。
「お言葉に甘えては」
「我等全員がか」
「はい、この三人も真田家に仕えますし」
「わし等もというのじゃな」
「はい、どうでしょうか」
「ふむ、幸村様
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