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或る短かな後日談
幕間 二
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の、考える力を持つ者。裏切る可能性があれば、全て。切捨て、処分し、捨て去ろうとしていて。

「クイーン。彼女等が城へ侵入した。ネメシスが迎撃に当たる」
「……そう、ですか」

 所詮は、鍵の無いままに行う死体操作術。嘗ての軍が備えたそれには及ばない――あくまで限定的な力。その上、アンデッドの製造を行うたび、彼女はその超常の力に頼らざるを得ず。使うたびに傷付く力。肉体でもなく、精神でもなく。それは彼女の自我そのものを蝕んでいき……やがて壊れる運命にあって。それでも彼女は、ネクロマンサーは。その技術を捨てる事無く。今この場所、他のネクロマンサーによる侵攻の可能性も限りなく少ないこの地においては、絶対の力を振りかざし。対立した彼の国も既に亡く。
 元は、ESPを行使することなくアンデッドの製造を行うために。そして、確たる自我を持った存在を生み出すために。クイーンを作り出したのだろうと。事実、彼女が与えられた余りに限定的なネクロマンシー技術はネクロマンサーを助け。そして、会話の相手、生活を共にする存在として。対等に近い存在として扱われた、と。
 クイーンは語り。死体操作術と共に彼女が得た傲慢さは、その優しさを塗り潰したと締め括る。本来のネクロマンサーは、クイーンよりも優しい人なのだと……私の知らぬネクロマンサーの過去、クイーンの語るその姿が、私には想像が出来なくて。

「……無事に戻って来れるでしょうか」
「心配する必要は無い。彼女はそう判断を違えない。引き際を見極める」
「けれど、もし……いえ、こんなこと、言っても仕方ないですわね」

 目の前に居る彼女は、死人にしては振れ幅の広い感情を持っている。姿にせよ、心にせよ。ネクロマンサーの寵愛を一身に受けて生み出された――そして、放られた。彼女に哀れみさえ感じてしまい。しかし。
 自身の判断。感情。思想を以って行動する彼女を。哀れむことなど出来はしないと、浮かんだ思いを放って捨てる。

「最悪の場合、私が救援に当たる。心配する必要はない」
「でも、それだとバルキリーさんまで……」
「私は下手を打たない」

 彼女の表情、目元は髪に隠れ、はっきりと見えないとは言え。酷く整ったその顔は、不安に彩られていて。
 そんな顔さえ。染める思いは、負の感情。心を傷付け、軋ませるそれであると、知っていながらも。知っていながらも、その顔は。

 とても。とても、綺麗で。

「……私は、下手を打たない。彼女を連れて、私もまた無事に帰還する――私が出る幕も無いかもしれない。誰も傷付きはしない」

 だからか。全てが不確定だというのに。こうして、約束など。彼女が浮かべた笑顔、その笑顔が見たくて。彼女の望むように、彼女が求めるようにと、感情任せな行動に走り。否。

 私は。彼女の望む物を
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