暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
開戦は歓声とともに
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現在、少年の心の中には二匹の《鬼》が棲んでいる。

《鬼》とは、負の意思の塊。人という種の醜い部分が結集、凝縮したものだ。過去、アインクラッドに現出した《災禍の鎧》も、そういった《鬼》と、心意が引き起こす最奥の禁忌である《融合現象》が合わさった奇跡というものだろう。

そしてレンの中に棲まう鬼達も、件の災禍の鎧から生まれたものだ。オリジナルと同じくレベルの攻撃力と精神感応力を持つ彼らを、そのちっぽけな体躯に押し込めた少年の心は極めて"正しく"歪んでいた。

それは奇しくも、ユウキが恐れていた事とほぼ同義だった。

明るい場所から急に暗い場所に出ると、とっさに夜目が効かないように。

一年もの時間は、少年から抵抗の二文字を薄れさせていた。鬼を抑えきれていない。災禍の鎧(オリジナル)の災禍たる側面を覆い隠していたベールが剥がれ落ちようとしていた。

そのことを、圧倒的な危機を、少年は冷静に自覚していた。

自覚していて、それでも止める手段がない。一度下がってしまった抵抗力を、昨日今日で上げる方法など今の少年の知りえる範囲ではないのだから。

ゆっくりと、しかし確実に――――

狂っていく。

重い溜息をゆるゆると吐き出した少年は、あと装備忘れの防具類がないかざっとメニューを一瞥したレンだが、そこにある一点を見つめて凍ったように時を止めた。

蒼玉(サファイア)のような輝きを放つ双瞳が見開かれ、桜色の唇は咄嗟に何を言っていいのか解からないとでもいうように小さく開閉されるが、そこからは何の応えも聞こえない。

震える指先が、おそるおそるという風にウインドウの表面をタップする。

ポーン、と。

軽い電子音が暗闇の中に響き渡り、少年の耳朶を叩く。

嘘……だろ、というちっぽけな呟きは、残り時間がゼロになったことで生じた、再度の転送エフェクトが掻き消した。
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