第7話「イカナル時ニモ笑顔ヲ絶ヤサナイ」
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巳厘野家の因果をなくそうとしていたのに、私が無駄にしてしまった。
――あの人が憎しみの中に落ちたのも、私が彼と手を繋ごうとしなかったから。
――思えば一度も見たことがない。道満の……。
「そうやって地べたを見てる暇があるなら、画面に向かって立ったらどうだ」
悲嘆にくれる結野アナを鋭い声が突き刺す。
ハッと見上げると、先ほどの銀時と同じように双葉が立ちはだかっていた。
ただ一つ違うのは、その瞳に恐ろしいほど冷徹な光が宿っている事だ。
双葉は蔑むわけでも励ますわけでもなく、ただ結野アナを見下ろすだけ。
「笑顔で天気予報を伝える……それが、お主が市井の人々ために選んだ術なのだろう」
呆然とする結野アナに双葉は容赦なく言い放つ。
「なのになんだ、その表情は?その目元に溜った粒は?そんなものを見せつける為に、わざわざここへ来たのか」
「………」
「泣きたければ大いに泣けばいい。しかし泣き顔を晒す奴よりヘラヘラと笑っている奴の方がまだマシだと思うぞ、私は」
その時、闇天丸がこちらに気づき容赦なく光弾を放った。
邪悪な弾は猛スピードで双葉に迫り――
「だがな――」
刹那――双葉は身を翻して袖から取り出した術札を投げ、闇天丸の攻撃を爆散させて叫ぶ。
結野アナを覆っていた闇を吹き飛ばす一言を。
「ヘラヘラ笑うのは雨雲を払いのけてからにしろ!」
* * *
巳厘野衆と銀時たちが力を合わせて闇天丸と激闘を繰り広げる戦場の中――結野アナは静かに立ち上がる。
「クリステル様、何を……」
「あなたはここでみんなをサポートして」
戦陣へ進む結野アナを、外道丸は引き留められなかった。
その表情は何物にも屈しない強さに満ち溢れていたから。
ほとんどの陰陽師は攻撃を食らい太刀打ちできず、戦場に立つのは闇天丸だけになっていく。
そんな中で結野アナは倒れる晴明の前へ立った。
「クリステル…何を…している…逃…げろ」
息絶え絶えに晴明は訴えるが、結野アナはそのまま堂々と目の前の闇天丸を見上げる。
無抵抗な結野アナを闇天丸は容赦なく掴み上げ、晴明の悲鳴を耳にしながら不敵な笑みを浮かべた。
【自ら我に潰されにくるとは馬鹿な女だ。だがお前の命一つでこの男の憎しみは晴れやしない】
「ごめんなさい」
【!】
呟くように謝る結野アナ。
だがそこに悲しみも涙も浮かんでいなかった。
「ごめんなさい。あなただけ責めてしまって……私はあなたにも笑顔でいて欲しかった。でも結局私一人笑ってるだけでしたね」
【無駄だ。お前の声など道満には届きやしない】
「あなたが好きで陰の下にいたんじゃないって私は知っています。あなたが江戸を護るためにいつも頑張って戦っていた
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