3部分:第三話
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
う」
「でしょうな。今の秦を見ていると」
「燕には残念なことに秦に当たる力はありませぬ。他の国もです」
「はい、秦の力はあまりにも強大です」
「各国と連合しても通用するかどうか。甚だ疑問と言わざるを得ません」
「御言葉ですが私もそう思います」
荊軻もそれに同意した。
「今の秦の力は極めて強大です。どう考えても倒すのは不可能です」
「はい」
丹はそれに頷いた。
「ですが一つだけ方法があります」
「方法が」
だが荊軻にはそれが何かわからなかった。
(そんなものがあるのだろうか)
普通に戦おうが外交を駆使しようが無駄だと思われた。彼にはやはりわからなかった。
「今の秦はどの様な体制ですか」
「秦の体制」
「そうです。秦王に権力が集中しておりますな」
「ええ」
それが秦の目指した体制であった。貴族や王族の権力を弱体化させ王に集中させる。所謂中央集権体制であった。秦王は自分の下に権力を集中させ、全てを決裁する体制を目指していたのである。
「最早秦で彼に逆らう者はおりません」
「その様ですね」
それは荊軻も知っていた。だが彼はそれには特に思うところはなかった。
「しかし彼がいなくなったらどうなるでしょう」
「秦王がいなくなったら」
「そうです、秦の全てを握る者がいなくなるのです。そうすれば必ずや秦の内部で動きがありましょう」
「それはそうでしょうが」
実際に後彼が天下を統一した後で崩御した途端に大規模な反乱が置き秦は滅亡している。陳勝呉広の乱から項羽と劉邦の旗揚げである。
「秦は今秦王に従っております。その彼がいなくなると必ずや内で騒動が起こりましょう」
そうした意味で丹の読みは当たっていた。だが彼の結論はその行動が問題であった。
「それで私はあることを決意したのです」
「あることとは」
荊軻は問うた。
「暗殺です」
丹は暗い笑みを浮かべて言った。
「暗殺!?」
「そうです。田光先生からお聞きしていませんでしたか」
「それは」
今彼は気付いた。あの時の田光の唯ならぬ様子を。彼は言葉で言わずその様子で彼にそれを伝えていたのだと。
(そういうことか)
荊軻はそれをようやく察した。その時彼は自分の命を燕に預けるとまで言っている。それを翻すことは彼の義侠心が許さなかった。
(よし)
彼は決心した。だがまだそれを口には出さなかった。まずは丹の心を確かめることにした。
「お待ち下さい」
丹を止めた。
「私は先生に知恵を貸すようにと言われてここに参上したのです」
「それは知っています」
丹の声が強いものになった。
「しかし最早これしか方法はないのです」
「いや、それはどうでしょう」
ある程度わかったがまだ試すことにした。
「もっとよくお考え下さい。必ず
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ