1部分:第一話
[3/4]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を討つことは到底不可能に思えた。だが彼はそれをあくまでやろうと考えていた。
「問題は誰を刺客に送るかだ」
丹は常にそのことばかり考えていた。だがそれが可能な者なぞ天下広しと言えど見つからなかった。
幾ら探しても見つかりはしない、困った彼は燕において賢人と評判をとる田光という老人に相談することにした。
彼は田光を自宅に招いた。そして彼をその中の奥へ案内した。
(これは只事ではないな)
田光は案内されるうちにそれに気付いた。見れば進む道は次第に暗くなり案内する者も丹一人となっていた。そして前を進む彼の足取りが妙に速かったのだ。
やがて二人は暗い部屋に入った。昼だというのにその部屋は暗く僅かな蝋燭の光だけが部屋を照らしていた。
「こちらです」
丹はようやく振り向いて田光に声をかけた。その顔は暗く、そして何らや無気味な雰囲気を漂わせていた。
田光はその顔を見て覚悟を決めた。だがそれは顔には出さなかった。
「はい」
何事も知らない素振りで頷いた。そして部屋の中央に置かれている席に向かった。
二人は席に着いた。互いに顔を見合わせる。
「本日先生に来て頂いたのは他でもありません」
まず丹が口を開いた。その顔が暗闇の中の蝋燭の火に照らし出される。
「国事について御教え頂きたいのです」
「国事ですか」
彼はそれを聞き密かに唾を飲み込んだ。おそらく太子は何やら恐ろしい計画を立てている、そう感じていた。
(まさか謀反か)
まずはそれについて考えた。だが今彼の政敵はこれといっていない。このままいけば彼が次の燕王になるのは確実であった。
(では何だ)
彼は考えた。重臣の粛清か。しかしこれもない。彼といがみ合っている燕の臣もいないわけではなかったがそれ程までに敵対してはいなかった。
(これも違うな)
どうやら国内のことではないらしい。すると外か。
「秦のことですが」
丹は言った。
(やはりな)
彼の予想は当たった。だがそれはおおまかなことであり細かなことまではこの時点では考えてはいなかった。それについて考えようとしているところであった。
だが丹はそれよりも前に彼に対して言った。
「今秦は我が国に迫っております。これについてどうお考えですか」
「秦ですか」
彼はそれまでの思考を一旦打ち切った。そして秦について考えを巡らせた。
(秦・・・・・・)
その強大さは知らぬ筈がなかった。そしてその野心も。今秦は中国統一に向けて大きく動いていたのだ。
秦を止めるのはおそらく不可能であろう。田光はそう見ていた。
「殿下、御言葉ながら今の秦は」
「それはわかっております」
丹はそれに対して反論した。
「ですが何としても防がなければなりません。あの秦王を除かなければならないのです」
「
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ