1部分:第一話
[2/4]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
微笑んだ。
「では北に行くとしよう」
そう言うとゆっくりと立ち上がった。
そしてそのまま北に向かって歩いて言った。道中色々とあり、時には喧嘩を売られることもあったが彼はそれを相手にはしなかった。笑われようとも気にしなかった。
やがて燕に辿り着いた。当時最も北にある国であった。凍てつく様な寒さが支配していた。
彼はここに身を落ち着けた。だがこれといって何をするわけでもなく書や剣、そして酒を楽しみ遊侠の徒達と交わった。そして無為に日々を過ごしていた。
だが世の中は無為には動いてはいなかった。秦の侵攻は止まるところを知らず各国は次々に滅ぼされその軍門に下っていった。
燕もまた例外ではなかった。北の果てにあるこの国にも秦の軍が迫っていた。
これに危機を覚えぬ者はいなかった。そして秦王を恐れぬ者もいなかった。彼はまさに餓えた虎の如く燕を狙っていたからだ。
その彼を憎む者がこの国にいた。太子である丹だ。
彼はかって趙で人質となっていた。そしてそこで幼い時の秦王と会っていたのだ。
彼等は人質同士ということもあり親しい関係にあった。そしてよく遊んだ。幼馴染みであったのだ。
丹は後に秦に人質として向かった。この時彼は古い友人と再会することに喜びを感じていた。
だがそれは見事に裏切られた。再会した秦王は冷酷な専制君主となっており彼を冷たく扱ったのだ。
その仕打ちに丹は驚き、そして怒った。彼は胸に激しい憤りを覚え秦から去った。そして彼に復讐する機会を狙っていたのである。
その彼のもとに一人の男がやって来た。秦の将軍である樊於期が来たのだ。彼は秦王を諫めたところ聞き入れられずその一族を皆殺しにされたのだ。
この時彼は友人の家にいて難を逃れた。そして彼への復讐を誓い燕に流れてきたのだ。
彼を受け入れるかどうか、燕は議論を重ねた。そして遂に丹が彼を匿うことんいなったのだ。
秦の襲来を恐れる声が多かった。だが彼はあくまで樊を匿うことにしたのである。
しかし秦の怒りを買うことは必定であった。秦王は恨みを忘れない。かって彼に反逆を企てた母の愛人は車裂きにされ一族郎党その首を晒されていた。彼は非常に酷薄な人物でもあったのだ。
その彼が燕に兵を向けたらどうなるか、答えは明白であった。燕の者は皆それを心から恐れていた。
だが丹には考えがあった。それは何か。
「要は秦王さえいなければそれでよいのだ」
彼はそう考えていた。そしてそこから結論を導き出した。
それは暗殺であった。秦王に刺客を送る、彼の結論はそれであった。
しかしそれは容易ではない。人を信じぬ彼は常に身の周りの警護を怠らなかった。宮殿には武装した兵士達が詰め、彼の側には剣を持って入ることはできなかった。彼は用心に用心を重ねていたのだ。
その彼
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ