―見えない地平―
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「…………」
覇王城、ジェノサイドブリッジの攻略戦の後しばし。とある野営地で、カイザーこと丸藤亮は一人、もの思いに耽っていた。空を見ると、自分たちの世界では見ることは珍しい、満点の星空が広がっていた……代わりにこの世界には夜しかないわけだが。
「……カイザー」
そんな亮に話しかけてきたのは、青い制服を着た二人組。先程の覇王城での決戦の際に、撤退ルートを示してくれた三沢大地にクロノス教諭である。二人とエドのおかげで、亮は十代と翔を連れて覇王城から撤退することが出来ていたのだ。
「三沢、十代はどうだ?」
「あ、ああ。今は翔と二人で話してるが……ダメだな、すっかりふさぎ込んでいる」
「仕方のないことナノーネ……」
自分の意志でなかったとはいえ、覇王であった時の経験は十代の心に深い闇を落としていた。……確かにそれも心配だが、今はそれよりも考えなくてはならないことがある。
「シニョール遊矢のことナノーネ……」
亮から話を聞いていたクロノス教諭が小さく呟く。神のカードの封印を解くために、翔が持つ悲しみのカードを追っていること。エドをも打ち負かし――この世界で打ち負かすという事は――今も、翔のことを狙っているということ。
「シニョール遊矢は……真面目すぎるノーネ……」
「カイザー、遊矢とは俺に戦わせてくれ。あいつとは俺が一番戦ってきたんだ」
「……ダメだ。三沢、お前では今の遊矢には勝てない」
こうして逃げ回っていても、神のカードの力を不完全ながら得た遊矢から、いつまでも逃げられる訳でもない。かつての親友として、異世界で戦い抜いてきたデッキを構えて三沢はそう宣言するものの、亮にバッサリと否定されてしまう。
「今の遊矢は、君が知っている遊矢ではない。エクゾディオスを見たことのない三沢よりは、俺が戦った方がまだ勝率はあるだろう」
亮が訥々と語っていく理由に、三沢は反対意見を口にすることが出来ない。確かに亮の言う通り、実力の面や情報面でも、確実にカイザーの方が勝率は高いのだから。
「……なら、あなたは遊矢を殺すことが出来るのか、カイザー」
「出来る」
この世界におけるデュエルの勝利という事は、つまりそういうこと――そう問いかけた三沢の質問に、亮は一瞬の躊躇もなく肯定の言葉を言ってのけた。
「翔を守るためなら、俺は悪魔にでも魂を売ろう」
カイザー亮がそんな意味深な言葉を吐くとともに、その大地に地響きが鳴り響いた。地震のように感じられたが、一瞬で収まると――
「……邪心経典を差し出す気がないのなら、そうするしかない」
――そこには、件の少年である黒崎遊矢が現れていた。三沢にクロノス教諭は、驚愕しながらも彼の名を呼ぶものの、遊矢はその呼び
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