九校戦編〈下〉
九校戦五日目(4)×巫女装束と『氷炎地獄(インフェルノ)』
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和装でも雫の振袖にはあれほど抵抗感を示しておきながら、妹の巫女姿には何の疑問もないのが親バカな感性を持つ俺である。それに巫女服は、母親である奏が破滅世界から持ってきた巫女服=戦闘服を深雪用に用意したモノだ。
舞台裏でそのような寸劇が演じられている事を知った深雪であったが、いつも通りにやれば上手くいけると兄兼父である一真に言われた事だ。心を落ち着いて開始の合図を待っていたが、フライングは重大なルール違反なのであまり気合を入れ過ぎないようにと言われたからだ。無意識に魔法発動させる程、本来の悪癖はないに等しいので本人も十分分かっていながら、静かに待機となっていた。
フィールドの両サイドに立つポールに赤い光が灯ったので、深雪は薄く閉ざしていた目を見開いて瞳を真っ直ぐ敵陣へ向けた。観客席でため息が漏れたが、一箇所ではなく観客席のあちこちというよりほぼ全滅のような感じであった。意外な事に若い男性よりも若い女性の方が、その強い光を放つ瞳を陶然と見上げていた。会場は、試合を観戦する空気ではなく戦場のような空気だからだ。相手選手には気の毒だが、観客の目は深雪の一挙手一投足に釘付けとなっていた。これを見ていたエリカ達も、その空気に呑まれていっていた。
「深雪の眼、まるで敵を睨むような感じ。これは剣術同士の試合の空気のような気がする」
「俺もそう思うぜ、まるで敵兵を今から魔法で攻撃しますみたいな感じだもんな」
「雫もそうだったけど、深雪のデバイスも一真さんオリジナルなのかな?」
「いや違うと思うよ。あれはいつも使っている携帯端末型のようだから」
「私もそう思います」
「・・・・深雪の本領発揮」
とエリカ、レオ、ほのか、幹比古、美月、雫といった順番で言っていた。ライトの色が黄色に変わり、更に青へと変わった瞬間、強烈なサイオンの輝きが自陣と敵陣関係なくフィールドの全面を覆った。フィールドは二つの季節として分かれ、極寒の冷気に覆われた深雪の陣地と灼熱の熱波に陽炎が揺らぐ敵陣地。
敵陣の氷柱全てが、融け始めているのがよく分かる。相手選手は必死の面持ちで冷却魔法を編み上げているが、それさえも灼熱にするかのように効果がなかった。味方は厳冬を越えた絶対零度の地獄となり、敵は酷暑を越えて灼熱地獄のような感じである。自陣は氷の霧に覆われ、敵陣は昇華の蒸気に覆われた。
「これはまさか・・・・」
「『氷炎地獄』・・・・?」
摩利と真由美がまるで呻いているような感じが聞こえたけど、俺は背中越しで聞いていた。氷炎地獄でインフェルノと言うが、流石の会長でも知っていたかと思いつつ深雪の後ろ姿とモニターを往復している。中規模エリア用振動系魔法『氷炎地獄』は、対象とするエリアを二分し、一方の空間内にある全
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