7.絶望の淵に立ったもの
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老人もまた、輝く光に目を細めた。
「なんと輝かしく……そして禍々しい。天界の連中もこの危機に気付いてくれればいいんだが……やっぱ無理かね?」
「難しいじゃろう。上の神とは幾度となく話をしたが……殆どは長き刻を経たが故にか頭の固さが化石並みなのが大半じゃ」
「だよなぁ………多分だが、本当の危機が迫ったその瞬間まで動かないんだろうなぁ……」
二人の老人は、これから起きる激動の時代に思いを馳せた。
「――さて、しみったれたジジイ二人でお茶会してても楽しくないから、もう行くわい。やるべきことをやるために、な」
「ほほっ、儂もまたやらねばならん事が多くあるでな!では、達者でのう」
「ああ――まったく、忙しくなるな」
来たるべき未来の為に、世界が動き出す。
「ベル……お前もきっと、巻き込まれるんだろうな……」
濁流のように荒れ狂う激動の時代を、未来へと繋げるために。
= =
エタルニア公国は、『六人会議』という最高意思決定機関によってその行く末を決められている。
6つの席が並ぶ、厳粛なまでの重圧に満ちたその会議室に、知らせが入った。
『元帥閣下ッ!カルディスラ王国のノルエンデ地方に、光が………!』
「とうとう、起こってしまったか……」
今まで、様々な用意をしてきた。
アスタリスクの回収、軍備の増強、クリスタル正教徒の融和、オラリオへのスパイ潜入――隣国と協調し、予見と懊悩を重ね、エタルニア公国はかつてないほどの力を得た。
だが――急激な変化は反発と抵抗を齎す。
アンチ・クリスタリズム。
クリスタル正教圏外の神の庇護を受けた国家で起こった思想。仕えるべき神をないがしろにし、驕った急伸を続けるエタルニア公国の勢力拡大は、神々に大いなる反感を買った。神ですら知りえない英知と力を持った人間を、彼らは許せなかったのだ。
そのせいで、現在クリスタル正教圏とアンチ・クリスタリズム勢力はかつてない緊張に包まれている。表面上は大事に至っていないが、いつ戦端が切られてもおかしくはない。
もはや、神々と足並みを揃えるのは不可能だろう。
彼等にとって人間はどこまでいっても玩具、もしくは下僕でしかない。
たとえエタルニアが全ての戦力と技術力を奉げたとしても、欲深な神たちはこちらの言い分を聞くことはないだろう。エタルニアが何のために興り、何故これほどに急いだのかを決して理解しようとはしないだろう。
それでは意味がない。その事態だけは断じて避けなければいけない。
神々にこの世界の命運を委ねる事だけは、してはならないのだ。
「大いなる光、大いなる災厄……これより先は、何が起こるか誰にも予見がつかぬ。そう、神にさえ――」
だが、希望はまだ
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