7.絶望の淵に立ったもの
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した。
粉塵と瓦礫に塗れた道に倒れ伏した僕には、もう何も残されていなかった。
もう、誰もいない。
村の皆も、弟も。
瓦礫に全身を打たれたぼろぼろの身体を大穴から立ち上る瘴気が蝕む。
肺が痛い。喉も、頭も、全身が悲鳴をあげていた。
だが、もう僕には悲鳴を上げるほどの体力すら残されていなくて。
ずるずると崩れ落ちた僕は、自分がこれから死ぬことを自覚した。
心臓の音が、やけに耳に近く聞こえる。
鉛のように動かなくなった体から、熱が抜けていく。
皆の逝った所に、僕も逝けるんだろうか。
それなら――
それでも、いい――
「………ティル。すぐ、そっちにいく、よ………―――」
その言葉を最期に、僕の意識は夜の闇に融けていった。
= =
「ッ!?」
一瞬――ほんの一瞬だけ、ヘスティアは今までにただの一度でさえ感じたことのない悪寒を感じた。奈落の底で口を開ける化物を覗きこんでしまったような、全身を絡め取る痛烈なまでの悪意。
それは、ほんの一瞬しか感じなかった。
だが、これは断じて気のせいではないだろう。
なぜならば――
「か、神様………あの光は、何なんですか?東の方から立ち上ってるみたいですけど………あれ?消えた……」
「…………………………」
「神様……?」
「………ゴメン、ベル君!用事が出来たっ!!」
気が付けば駆け出していた。
天を貫くような巨大な光の柱。あれは、明らかにあり得ない。
あれから感じたエネルギーは、天界の戦神が放つそれさえも上回っていた。
神でさえも起こせない力――そんなものが世界に現れていいはずがない。
――カルディスラ大崩落。不意にそんな言葉が頭に浮かんだ。
Dの日記帳に書かれていた、カルディスラ大崩落というキーワード。あれが起きるのは、確か今日ではなかったろうか。カルディスラ地方は、たしかあの方角にあったのではなかったろうか。
日記にあったその内容では、カルディスラ大崩落とは単なる大地震による崩落で、それを切っ掛けに家を失った少年がファミリアにやってくるという内容だったはずだ。
なのに、あれは何だ。あの世界そのものを貫くような光は――あれでは、崩落どころかカルディスラにいた人々は一人残らず――
「何が……何が起きたぁッ!!」
ヘスティアは事の真相を確かめるために旧知の神々の下へと走った。
= =
「……大災厄の予兆、か。始まってしまったのう………」
ある森の奥底にある一軒家。そこに住まう一人の老人が、手に持った紅茶を静かにテーブルに置いた。そのテーブルを囲っていたもう一人の
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