第147話 黄忠
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じっと見つめていた。
「もうよい」
正宗は黄忠との会話を打ち切ると踵を返し牢屋から立ち去ろうとした。
「お待ちください! この私の一存で清河王のお命を狙ったのです! どうか私を処刑してください」
黄忠は必死の形相で正宗に縋り付こうとすると兵に取り押さえられた。しかし、黄忠は取り押さえる兵を振りほどこうと暴れながら正宗に同じことを叫んだ。正宗は独房の扉の前で歩みを止め、兵に取り押さえる黄忠に振り向いた。
「黄漢升を離してやれ」
正宗は黄忠を取り押さえる兵に命令を出した。兵は彼の命令に従い、黄忠から一歩下がった。しかし、兵達はいつでも彼女を取り押さえられる距離を保って立っていた。
「黄漢升、私はそなたが娘を人質に取られることは分かっている。そなたの娘の居場所もな」
正宗の言葉に黄忠は驚いた表情を浮かべた。彼女の口を震わせていた。
「ほ、本当に。本当にり璃々の居場所をご存知なのですか?」
黄忠は動揺した態度で正宗に縋るような視線を向けた。正宗は黙ったまま頷いた。すると黄忠は両瞳から涙を流し、泣き顔を隠すように俯いた。正宗とその場に居合わせた者達は彼女を黙って見つめていた。
「黄漢升、そなたの娘は私が助けだしてみせる。そなたには悪いがお前の娘を救い出すまではこの独房に居てもらうぞ。そなたが生きているからこそ娘の命は価値があるのだからな」
正宗が黄忠に語りかけていると董允が何やら思いついた表情をしていた。
「ああ。清河王様がわざとらしく黄漢升様が生きていることを吹聴しながら連行したのはこういう訳だったのですね」
董允は正宗に機転に感心したような様子だった。泉は「流石、私の主君!」と尊敬の眼を正宗に向けていた。黄忠は正宗と董允の会話についていけないようだった。彼女が気絶している間だから当然のことといえた。
「清河王、いつから私が命を狙っていたことをご存知だったのですか?」
しかし、黄忠も二人の会話に着いていなけなくても、正宗が黄忠の娘の命を救うために骨を折ったことが理解できたようだった。彼女は後悔と感謝がないまぜになった表情をしていた。正宗が彼女を負傷させた時点で正宗が彼女の娘を守るために動くには、それより前に犯人が黄忠であると確信していなけれならない。加えて彼女の娘が人質になっていることを知っている必要がある。
「一度目の襲撃の後、確信ではないが黄漢升、そなたではないかと考えていた。そなたも自分が疑われると分かったからこそ間を開けず私の命を狙ったのであろう?」
「はい。申し訳ございませんでした」
黄忠は泣き崩れながら嗚咽し小さい声音で正宗に謝罪した。彼女は理解したのだ。彼女が正宗の命を狙っている時、正宗は彼女と彼女の娘を救うことを考えて行動して
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