第147話 黄忠
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「清河王様にお褒めいただき父も誉れのことと思います」
正宗の視線に気づきごまかすように董允は拱手して礼を言った。
「士官の話は明後日にでもする。ところでここに同席させる意味は分かっているな。分からないなら、直ぐに独房から出て行くのだ」
正宗は真面目な顔で董允に言った。董允は得心しているという表情だった。
「士官の話を断れば、この場に同席することは許さないということですね。承知しております。袁太守の善政は南陽郡に滞在してよく知っております。父も袁太守の統治方針に共感しておりました。可能であれば袁太守に士官したいと思っていましたが、伝手がなく困ったいたところです。喜んで父は袁太守の士官のお誘いお受けします」
董允は正宗に拱手して深々と頭を下げて言った。
「そなたは士官の誘いを受けるのか?」
正宗は董允に間髪入れず聞いた。
「清河王様の元で遊学させていただけないでしょうか? 冀州の統治の噂を風の便りで聞いております。実に興味深いです。遊学が適い、時が来れば私は袁太守にお仕えいたします」
「遊学!?」
泉が素っ頓狂な声を上げ董允を凝視していた。正宗に士官の条件に遊学を求めること自体無礼極まりない。にもかかわらず、正宗の元で遊学させて欲しいという董允の態度は図々しいといえた。正宗は董允が提示した条件を聞き、興味深そうに董允を見つめると笑みを浮かべた。
「いいだろう。ただし、そなたの力を試させてくれぬか?」
「喜んで!」
董允を笑顔で返事した。
「董休昭、そなたを試すのはもう少し先になる。今は早く片付けなければならないことがある」
正宗はそう言い、横たわる黄忠を凝視していた。独房内にいる他の者達も正宗と同じく黄忠に視線を向けた。
黄忠が独房で意識を失っている間に七乃配下の暗兵が正宗に朗報をもたらした。黄忠の娘が宛城下のある商家の屋敷内に拘束されているとのことだった。この商家は蔡徳珪の祖父の代から付き合いのあるらしく、蔡氏の隆盛と比例して繁盛していた。蔡氏との繋がりもあり、この商家は宛城下だけでなく南陽郡の主要な都市でも手広く商売していた。美羽に対しても面従腹背な姿勢で、以前から美羽も存在を懸念していたらしい。
正宗は暗兵の連絡を受け、引き続き監視を続けるように命令を出した。しかし、彼は暗兵にもう一つ命令を出した。黄忠の娘が宛城外に連れだされることを危惧し、もし娘が宛城外に連れだされそうになった場合、奇襲を仕掛け娘を奪い返せというものだった。
正宗が暗兵から報告を受けて二刻後(一時間位)――
黄忠は朦朧とした目つきで目を覚ました。体を動かそうとしたが身動きとれず周囲に視線を向けた。彼女が最初に視線に捕らえたのは正宗だった。彼
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