永久消滅のベータ
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か、理解している。だからルカ子は悲痛な表情を浮かべ、俺に迫った。
「まゆりちゃんは、ボクの大切な友達なんです!! なんとか、ならないんですかっ!? ボク、まゆりちゃんのためなら男の子にだってなります!! どうにか、どうにかならないんですか!?」
「……ならない。どうしようもないんだ」
「そんな……やってみなくちゃ分からないです……! 考えましょう、二人でーー」
「何度もやったさ!! 何度も、何度も何度も何度も!! でも、無理だった。世界はまゆりの死を望んでいる。俺達がどう足掻こうと、無理なんだよ……」
「そんな……そんな……何で……何でっ……!」
ルカ子は両手で顔を覆い、嗚咽を堪える。俺はそんなルカ子を見ていられなくなり、そっぽを向く。俺の選択は、絶対に間違っている。まゆりよりも、ルカ子を取った。命より恋愛感情を優先した。どう考えても俺に正義はない。
でも、どうしても俺にはルカ子を悲しませることは出来なかった。ルカ子の想いを、世界線を隔てるほどの愛を無視することは出来なかった。俺は神じゃない。だから、合理的で冷酷な決断なんて、下せない。
「すまない……ルカ子。お前の想いを、俺には消せないんだ……」
「……」
ルカ子は優しい奴だ。俺の言葉に嬉しがるどころか、傷を抉られるように苦しんでいる。俺の言葉は言い換えれば、世界中の何よりもお前が大事だという内容だ。でも、ルカ子はそんな言葉は求めていない。ルカ子はまゆりのことが本当に好きなんだ。まゆりは助かるという言葉しか、聴きたくないんだ。それがますます俺を後悔の渦へと突き落としていく。
でも、だからと言って選択を取り消すことは出来ない。俺は瞳を固く閉じ、拳を深く握りしめた。
「ルカ子、お前は何も気にするな。これは、俺の選択だ」
俺はルカ子にくるっと背を向け、その場から離れる。この重苦しい空気から逃げるように、俺は急ぎ足で去っていく。そう、これは俺の選択なんだ。これ以上、彼、いや彼女を巻き込めない。これは俺の罪なんだ。
柳林神社の木々は、清々しいほどにさらさらと揺れた。風が強まったようだ。俺は何故か後ろめたく感じた。何の感情もない木々にビビるなんて、どうかしている。要は、心のありようだ。清い場所の木ゆえに、醜い俺が居たたまれなくなる。俺はそこから、世界から逃げるように、走った。
そこからは逃げの人生だった。
まゆりが死ぬときに、彼女が少しでも苦しまないように危険のない場所を選び、告別式にも出ず、ずっと、彼女の死から逃げた。己の選択の結果から逃げ続けた。因果を外れたものとして、犯罪者として、俺は世界から逃げるように引きこもった。心が空になってしまった。全てがどうでもよくなった。
まゆりの死に場所は、有明にあるコミケ会場だった。ここならば
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