試練
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話をしてみるといい。信じられないと思うけど、その子はもうすぐ目覚める。君が思うより“はやて”は強いし、私も最近理解したんだけど、人間はね……奇跡を起こせるんだ」
私の伝えた言葉は、“私”にとってはまだ受け入れ難い事のようだった。暗黒の中に居続けたから、何が本物なのかすらわからないのだろう。だが……粒子に匹敵する程ちっぽけでも光があれば、識別は出来るようになる。
「あなた……泣いとるんか……? 悲しい事……いっぱいあったんやな……」
「ッ!? ……本当に……こんな事が……!」
「せっかくの美人なのに涙でぐしゃぐしゃな顔しよって……ずっと……一人で泣いとったんやな。泣くな、とは言わへん。泣きたい時は好きなだけ泣けばええ……せやけど泣いた後は、流した涙の分だけ笑わなあかん。笑顔を浮かべられるようにせえへんと……バチが当たるんや」
「えが、お……?」
「前に夢で見てから、ずっと考えてたんや。あなたに贈る名前を。闇の書とか、そんな辛い名前やあらへん。私は管理者だから、それが出来る。夜天の主の名において、あなたに新たな名を贈る。強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール、リインフォース」
「リイン、フォース……!」
“はやて”により“私”に美しき名を贈られた。祝福の風、リインフォース。それは世界が異なろうと、優しい主が贈ってくれた大切な名前。私の主はやてもきっと、同じように考えて付けてくれたのだろう。そして私に贈られた名はもう一つある。兄様から贈られた……闇を克服した証、ネロ。この二つの名こそが、今の私を示しているのだ。
そしてこの瞬間、私は“試練”を達成した。“試練”の達成条件は……“私”に名前が贈られる事。その条件を満たした今、私がここにいる理由も無くなる。よって、私の姿はこの世界から消え去ろうとしていた。
「もう……行くのか?」
「まあね。私の帰りを待ってくれる者が、向こうにはいっぱいいる。だから……帰らなくちゃいけないんだ」
「そうか……羨ましいな。帰りを待ってくれる者がいるというのは……」
「何を言う、君もこれから作っていけばいいじゃないか。君は私なんだから、きっと出来るはずだよ」
そうやって私は“私”の肩に手を置き、静かに頷いた。「そうか……それは楽しみだ……」と呟いて“私”も私の手に自分の手を重ね、その気持ちを共有した……。
ただ、ここで一つ誤算が発生した。私が覚え直した魔法の中には、主はやてがとある場所からインストールしたものも含まれている。その中に主はやてが気に入った魔法があり、バグを強引に切り離した影響か、偶にオート発動してしまう時があるのだ。そして今回、勝手に発動してしまったのは……。
――――ビリリィッ!!
「え……えぇっ!? わ、私の騎士甲冑が!
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