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悪来
1部分:第一章
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こそというのは確かにあった。しかしここで名乗り出て来た者がいた。
「いえ、殿」
「典偉か」
「はい」
 名乗り出て来たのは彼だった。その髭だらけで巨大な姿と顔を見せるのだった。
「ここは私にお任せを」
「呂布の軍を止めるというのか」
「如何にも」
 頭を垂れていたがその声は確かであった。
「ですからここは早くお逃げを」
「ふむ」
 曹操はここであらためて典偉を見た。その顔と巨体を見て彼の豪力も思い出した。そのうえで彼はここはこの典偉に任せようと決断したのであった。
「わかった」
「それでは」
「うむ、そなたに任せる」
 彼は断を下した。
「我が軍の後ろ、しかと守ってみせよ」
「はっ、それでは今より」
「全軍撤退だ」
 曹操はまたこの指示を下した。
「すぐに退くぞ、よいな」
「はっ、それでは今より」
「さがりましょう」
 曹操も部下達も一斉に馬に飛び乗る。曹操軍の将兵達は潮が引くように下がっていく。それとは逆に典偉は己の僅かな手勢と共に追撃にかかる呂布軍に向かうのだった。
「さあ、来い!」
 その両手の戟を手に叫ぶ。まるで嵐の如き声である。
「この悪来典偉ある限りこれ以上は進まさせぬ!」
 呂布の軍が強いのは将である呂布だけではない。その軍勢も北方の遊牧民族の出の者が多く馬に乗るのが上手くまた精悍であった。どの者も強い。しかし典偉はその彼等に向かって突き進みその両手の戟を縦横無尽に振るう。一振りごとに腕や首や胴が乱れ飛び馬ごと断ち切られていく。血煙が辺りを覆った。
 これを見た呂布の軍勢は動きを止め典偉は見事曹操軍の撤退を助けた。これが彼が曹操を助けた最初のことであった。
 呂布との戦いは進み曹操がある城を攻めた時だった。その城には誘い込まれてしまい彼は瞬く間に敵に囲まれてしまった。自軍は散り散りになり何処に誰がいるのかわからない有様であった。

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