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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
夢の中
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めゆめ忘れないことだ――

 という重く低い声とともに、その主の気配とすべての音は遠退き、不可視の霧の中に没した。
 そして、しばらくして、おもむろに立ち上がったデイドラの瞳は闇に沈んでいた。


     ◇


 デイドラはゆっくりと瞼を持ち上げる。
 目に入るのは見慣れた粗末な天井。
 背中に感じるのはテュールのベッドだと瞬時にわかった。
 そして、片腕を包み込んでいるのはテュールの温もりだと、視線を遣ってわかった。
 テュールが目尻に涙を(にじ)ませているのを見て、デイドラは無意識のうちに手を伸ばしていた。

 ――お前は復讐以外のことは許されていない――

 だが、計ったように頭に響いた声に手を止めた。

 (俺は復讐に生きている。他のものは邪魔なだけだ)

 デイドラは自分に言い聞かせるように内心で呟くと、テュールに大事なもののように抱えられている腕を引き抜き、起き上がった。
 ゆっくりとした動きで部屋を見回して、目当てのものを見つけると、ベッドを(いざ)り離れようとした――その時だった。

 「遠くへ行くな……近くにおれ…………デイドラ……」

 背後からのテュールの細い声に咄嗟に振り返る。
 しかし、予想と反してベッドで丸くなっているテュールの目は閉じられていた。

 (寝言…………か)

 デイドラは我知らず胸を撫で下ろす。
 だが、次の瞬間に流れ落ちた一粒の涙が残した跡にはっとする。
 それは窓からの月光を反射させて、暗闇に浮かび上がった。

 (俺は…………復讐に生きなければならないのだっ!)

 デイドラは目をテュールから引き剥がすと、机にあった四振りの短刀を引ったくるように掴んで、早足で扉に向かった。
 そして、振り返ることなく、扉を潜った――まるで今生の別れであるかのように。
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