5.君はもっと強くなる
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て替えの利かない大切なファミリア。その未来を憂う表情は、子を憂う母親のようでもあった。
「無理して冒険しなくたって人は生きていける。ベル君には普通に暮らして、普通に戦って、普通に老いて欲しいな」
「………了解した。確かにベルはまだダンジョンに対する危機感が欠けている節があるからな」
「それ、キミは人の事言えないからね……」
その日、話は結局「ベルを5層に近づけない」という方向性で決まった。
だが、このとき二人は二つの致命的なミスを犯していた。
ひとつ、ベルが途中から目を覚まし、自分を5層に近づけないことをヘスティアが決めたあたりから話を聞いていたこと。
そしてもう一つは、その話を聞いていたベルが二人の想像以上に「男の子」だったことだ。
(神様もリングアベルさんも、ひどいや……僕だって4層までは平気だったし、1層下に降りたって実力は通じる筈だ!それに……僕はオラリオに『冒険』しに来たんだ!神様の言うような平凡な日々を送るために剣を取ったんじゃ……ないよ!)
この日の夜、ベルは人知れずあることを決定した。
明日、リングアベルにもヘスティアにも黙って5層に行き、自分が二人が言うほど弱くない事を証明してやる、と。その子供っぽい反抗心は、結果的に日記と同じ道を辿ることになる。
= =
「はぁっ、はぁっ、ベルめ……何所にいる!?まったく、俺に男を追いかけさせるとはいい度胸だッ!!」
普段の余裕ある笑みを浮かべたキザな態度は鳴りを潜め、リングアベルはダンジョン第4層を全力疾走していた。最近購入した弓矢を携えて目の前の魔物を次々に撃破しては、魔石もドロップアイテムにも目をくれずにただただ周囲に目を光らせる。
朝起きた時、ベルの姿がないのに気付いたのはヘスティアだった。一体どこへ行ったのか不思議に思った二人は周囲を見渡すが、どこにも彼の姿はない。やがて食卓を囲うテーブルの上に1枚の書置きを発見した時、二人は思わず悲鳴を上げそうになった。
『今日は一人でダンジョンに潜ります。僕だって一人でできる事くらいあります』
その文章から、微かな怒りと意地を感じ取れた。その短い文章を読んですぐに、二人は「昨日の話を聞かれた」と悟り、自分たちの迂闊さを呪った。まさがベルが勝手にこんな行動をとるほど短絡的だとは思っていなかったのだ。
事態を把握したリングアベルは、すぐさま装備を抱えて教会を飛び出した。ヘスティアの呼び止める声も聞こえたが、今回ばかりは後回しにした。
――あの大馬鹿野郎め!
ギルドによると既にベルは迷宮へ入っていた。恐らくは5層へ向かっている筈だ。
そして今日、5層にはロキ・ファミリアが狩り逃したミノタウロスがいる筈。
まだ冒険者になりた
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