2部分:第二章
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第二章
「妹君に会いたいのだが」
「宰相殿がですね」
「そうだ。一度会いたい」
春申君も男だ。興味がない筈がない。彼はまさに乗ってしまい罠にかかってしまったのだった。自分では気付かないうちにその罠に。
李園は知っていたが言わない。そうしてそのまま。彼に対して答えたのだった。
「それではすぐに」
「よしっ、それではだ」
こうして彼の妹は楚に入り春申君に会った。春申君はその妹の美しさに気を取られすぐに妾の一人とした。程なくして妹は子を孕んだのだった。
李園はそれを見てまた邪な笑みを浮かべそのうえで。次の策に動くのだった。
妹に何かを囁いた。するとすぐに妹は春申君の側で囁いたのだった。
「公子」
まずはこう声をかけた。
「貴方様は最早楚王にとって兄弟以上の方ですね」
「その通りだ」
春申君にもその自負はあった。彼が王としただけではない。長きに渡って宰相として仕えてきている。それはまさに水魚の交わりであった。
「私と王はまさに同じ。王あっての私であるし私あっての王だ」
この自負を述べた。それだけのことはあると思いだ。
しかし妹はここでさらに囁いた。その裏にあるものを彼に悟られないようにして。
「貴方様が宰相になり二十年。ですが王にはお子様がおられませんね」
「一応お子はおられるが」
しかし母の生まれがよくなかった。それで後継者とはみなされていないところがあったのである。
「それでもな」
「ではこのままでは王の御兄弟が次の楚王ですね」
「そうだ」
彼女の言葉に頷くその声が微かに曇った。
「そのように今話されてもいる。誰がよいかな」
「それではです」
女はここで。さらに囁くのだった。
「若しその御兄弟のどなたかが王になればです」
「どうなるというのだ?」
「それは貴方様にとってよいことではないのではないのですか?」
「それはまたどうしてだ?」
「貴方様は長い間王の下で権勢を持っておられました」
このことを否定する者は誰もいない。春申君が楚において第一の権勢を持っていることは最早楚だけではなく天下の知っていることだった。
「それで王族の方にも礼を失したことはありませんか?」
「それは」
「ない訳ではありませんね」
「言われてみればだ」
彼が最も自覚していることだった。認めない訳がなかった。
「その都度王のとりなしで何事もなく済ませてもらえたが」
「では御兄弟が王になられればです」
「これまでのようにはいかぬな」
「そして恨みを持たれている方が必ず害を為さんとするでしょう」
こうも囁くのであった。
「その時にこそ。そうなれば貴方は命を落とされるかも知れません」
「命を失わずともだ」
春申君自身も考えた。考えずにはいられなかった。
「宰相として
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