第五十五話 最後の戦いその十
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「勝っていた」
「ああ、本当に最後までな」
「しかし最後の一瞬で敗れた」
ティラノサウルスの怪人の言葉だ。
「無念なことにな」
「そうだよな、あたし達は見切ったんだよ」
「我等の攻撃をか」
「それでその最後の一瞬にな」
まさにその時にというのだ。
「攻撃を仕掛けて止めの一撃を浴びせたんだよ」
「そういうことか」
「それで勝ったんだよ」
「闘っている時は我等の方が強かったが」
「見切ったらな」
怪人のその攻撃をだ。
「強さは変わるよな」
「そうだな、攻撃は見切られたなら終わりだ」
「それであたし達の方がな」
「強くなったその時にか」
「勝ったんだよ」
そういうことだというのだ。
「簡単に言うとな」
「成程な、そういうことか」
「じゃああんた達もか」
「これで去らせてもらう」
「あんた達との戦いは多かったがな」
「終わったのだな」
「名残惜しくはないさ」
薊はこの感情は全くなかった、これは他の少女達も同じだ。
「終わったって思うだけさ」
「それだけか」
「ああ、あたし達は戦いは好きじゃないからな」
「身体を鍛えていてもか」
「拳法もモトクロスも違うんだよ」
戦う為にしているものではないというのだ。
「楽しんで心身を鍛える為のものなんだよ」
「だからしているのか」
「ああ、だからな」
「戦いはか」
「もうな」
それこそというのだ。
「しないさ」
「そう言うのか」
「ああ、だから戦いが終わるのが嬉しいんだよ」
これまた心からの言葉だ。
「本当にな」
「そうなのだな」
「だから今回のお別れはな」
「格別か」
「こんな開放感はないよ」
笑みさえ浮かべていた、他の少女達も。
「やっとって思ってな」
「わかった」
「そういうことでな」
「俺達はこれで去る」
「次ぐに生まれ変わって縁があったらな」
その時にというのだ。
「また会おうな」
「そうだな、またな」
「今度は仲良くしようぜ」
薊は怪人達に微笑んでこうも言った。
「戦わずにな」
「そう言うか」
「ああ、戦うより仲良くした方がいいからな」
「面白いことを言う、俺達は戦い以外を知らないというのに」
「今度生まれ変わった時は違うだろ?」
戦い以外のものも知っているというのだ、その時は。
「その時はな」
「戦わずにか」
「仲良く遊ぼうぜ」
「それが可能だったならな」
これが怪人の返事だった、そして。
そのままだった、完全に灰となり姿を消した。後に残ったものは何もなかった。
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