1部分:第一章
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顰めさせた。斉といえば秦と並ぶ楚の宿敵である。その名を聞いて顔を顰めさせない筈もなかった。
「何故斉王が貴殿に使者を送ったのか」
「妹のことでして」
ここで彼は話を切り出してきた。
「それで使者と会っていました」
「そうか、妹君のことか」
春申君はそう聞いてまずは安心した。また斉が企んでいるかと思えばそうではなかったからだ。両国は国境を接しており古くから数多くの戦いを経てきた間柄であるからだ。用心に用心を重ねていたのだ。
「それならよいが」
「何しろです」
李園はここでまたあえて言うのだった。
「妹のことが斉まで評判になっておりまして」
「何っ、趙から斉までか」
春申君は何故そこまで評判になるのかすぐに察した。女が評判になるのは何によってか、これもまた昔から答えがはっきりとしているものだった。
「そこまでなのか」
「兄の私が言うのも何ですが」
やはり柔和な笑顔のままである。
「確かに」
「そして妹殿だが」
春申君は知らず知らずのうちに話に乗ってしまっていた。聡明で知られた彼であったが宰相になって長い。歳も経ていた。それが出てしまったのだった。
「結納は終わったのか」
「いえ、まだです」
李園はここでまた仕掛けた。内心ほくそ笑みながら。
「まだです」
「そうか、それならだ」
春申君はまた知らず知らずのうちに乗っていた。
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