第二百十三話 徳川の宴その十二
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「あの御仁の器をな」
「それでは」
「そうさせてもらう、しかし」
「しかしとは」
「勘助、御主随分と徳川殿を買っておるな」
このことをだ、信長は言うのだった。
「それは何故じゃ」
「はい、最初はそうではありませんでしたが」
「それでもか」
「近頃のあの方を見ていますと」
もっと言えば三方ヶ原以降だ、その時からの徳川のことを話すのだった。
「一日ごとに素晴らしくなっていますので」
「それでか」
「あの方ならばです」
「天下の執権になれるか」
「それだけの方になられたかと」
「わしも徳川殿は優れた方だと見ている」
信玄にしてみてもその人を見る目は確かだ、それ故に二十四将を巧みに使い武田家を雄飛させられたのだ。
それでだ、さらに言ったのだった。
「しかしか」
「それがしが見ていますと」
「非常にか」
「その器が日々大きくなっていますので」
「ふむ、負けてそれからか」
「大きくなられました」
まさに三方ヶ原からというのだ、家康がそうなったのは。
「あの方は家臣や領民を強く想われていて素直でしかも律儀な方です」
「仁愛の持ち主じゃな」
「はい、それで」
「その仁愛がか」
「あの方を育てておられます」
「仁愛か」
「あの方の持たれているものの中でも大きいです」
その仁愛がというのだ。
「まことに」
「仁愛、人になくてはならぬものじゃ」
「そうです」
「では見ようか、徳川殿のそれも」
「そして徳川殿はどうやら」
ここでだ、山本は信玄にこんなことも言った。
「微かにではありますが、当初は」
「徳川家康となられた頃にじゃな」
「天下も望んでおられました」
そうだったというのだ。
「それも考えておられましたが」
「大名としてじゃな」
「はい、当初は」
「しかしじゃな」
「上様を見まして」
信長、彼をだというのだ。
「天下の器であると見抜かれ」
「そしてじゃな」
「ご自身が天下人であることはです」
それは、というのだ。
「諦められました」
「そうなったな」
「殿も天下は」
「うむ、わしも諦めた」
信玄もだ、笑って言った。
「わしは上様の様には出来ぬ」
「そう思われたからですな」
「そうじゃ」
まさにそう思ったが故にというのだ。
「だからこそじゃ」
「天下人ではなく」
「天下の柱の一つにな」
「なられることを選ばれましたな」
「そうじゃ、思えば御主も長篠の時は」
「はい、幸村にかなり任せていました」
それでというのだ。
「あの者ならと思いましたし」
「武田を任せられるとか」
「その軍略でも」
そう思ったが故にというのだ。
「ですから」
「確かにな。あの者は」
「真田家は人が揃っていますが」
その中でも
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