巻ノ二 穴山小助その三
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「是非」
「そしてそのうえで」
「それがしを家臣とするかお決め下さい」
こう言うのだった、そしてだった。
穴山は幸村を諏訪の外れの山の方に案内した、山を幾つか越えてだった。
その山に向かう、だがその道中で。
すらりとした中背の旅の武芸者に会った、長い髪を髷にせず伸ばしそのうえで頭に白い鉢巻をしてそれを伸ばしている。背には長い刀がある。
その彼を見てだ、穴山が声をかけた。
「おや、貴殿は」
「はい、旅の武芸者で雲井十三といいます」
「雲井殿ですか」
「左様です」
こう名乗るのだった、見ればその顔は穏やかに整い女と見まごうばかりだ。
その彼がだ、幸村と穴山に言うのだ。
「実はこの近くに賊がいると聞きまして」
「ではそれがし達と同じですか」
「というと貴方達も」
「これから賊を退けに行きます」
幸村はこう雲井という武芸者に答えた。
「民を虐げる者達を」
「ではご一緒しますか」
雲井は微笑み幸村を誘った。
「二人より三人の方がよいでしょう」
「戦は数、ですな」
「その通りです」
「はい、それでは」
幸村は微笑み雲井に答えた。
「共に参りましょう」
「それでは。それでなのですが」
三人で賊を退治すると決めてからだ、そのうえで。
雲井は幸村ら穴山にだ、あらためて問うた。
「貴方達のお名前は」
「それがし穴山小助と申します」
まずは穴山が名乗った。
「天下一の鉄砲の使い手です」
「鉄砲を使われますか」
「他にも色々と使いますが」
「その中でもですか」
「鉄砲が一番です」
得意だというのだ。
「一人でも賊を成敗出来ます」
「そこまでお強いのですか」
「だから天下一の鉄砲の使い手です」
「では期待しています」
「それがしの鉄砲、是非共御覧下さい」
穴山は笑って言う、その彼の笑みを見つつだ。雲井は今度は幸村に顔を向けて問うた。既に一行は共に賊がいる山に向かっている。その中での言葉だ。
「そして貴方は」
「真田幸村と申します」
幸村は雲井に穏やかな声で名乗った。
「只今旅をして腕の立つ者を探しています」
「何と、貴方が真田幸村殿ですか」
「それがしのことご存知ですか」
「若いながら智勇兼備の方だと」
「そう聞いておられますか」
「はい、ではその幸村殿と穴山殿が共におられる」
それではとだ、雲井は言うのだった。
「それがしがいなくともですな」
「雲井殿がおられずともとは」
「と、いいますと」
「賊は無事に退治出来ますな」
こうも言うのだった。
「お二人なら」
「いや、どうも雲井殿も」
幸村は雲井を見つつ彼に述べた。
「相当な方とお見受けしますが」
「おや、そう思われますか」
「剣術の他に手裏剣、そして忍術も」
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