巻ノ二 穴山小助その二
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「本能寺のことから織田家も去り」
「今は主がおりませぬな」
「それでいささか乱れていまして」
「賊が出ていますか」
「はい、そうです」
まさにというのだ。
「それで山の方に賊が出ています」
「それはよくありませんな」
そう聞いてだ、幸村はすぐにこう言った。そのうえで険しい顔になってそのうえで穴山に対してこう言ったのだった。
「ではすぐに」
「賊をですな」
「成敗しましょう」
「そう仰ると思っていました、真田幸村殿といえば正義感も強い方」
穴山はこのことも言うのだった。
「民を苦しめかねぬ賊がいると言えば放ってはおけませんな」
「必ず」
「では参りますか」
「これより」
「そうしましょうぞ、しかしそれがし初対面ですが信じられますか」
「はい」
その通りだとだ、幸村は穴山に答えた。
「それでもわかります」
「それがしが信じられる者だと」
「人は目に出ます」
幸村ははっきりとだ、穴山に答えた。
「その人間そのものが」
「目ですか」
「心正しき者は目が澄み光が強くはっきりとしております」
「ではそれがしの目も」
「非常に澄んではっきりとしております」
そして光も強いというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「それがし穴山殿を信じられるとです」
「見抜かれたと」
「左様です」
「それがしがその賊の仲間であれば」
「今ここでそういう賊の仲間もおりますまい」
幸村は笑って穴山に答えた。
「言うのなら賊を前にした時に後ろからです」
「そう言ってですな」
「背を斬ってくるものですから」
若し穴山が賊の仲間であればというのだ。
「穴山殿の場合は撃つでしょうか」
「そうなりますな、それがし刀や手裏剣も使えますが」
「やはり鉄砲ですな」
「こちらは天下一と自負しております」
「そうですな、天下一の腕があれば然るべき主に仕えるか仕えんとします」
幸村はこの読みも言ってみせた。
「ですから」
「賊をして弱い者を撃つなぞ」
穴山はそうした行為にはこのうえない嫌悪を見せて述べた。
「それがしの様な者のすることではござらん」
「左様ですな」
「真に強い者は賊になぞならむもの。例え賊になろうとも」
それでもだというのだ。
「弱い者は相手にしませぬ」
「強い者と戦いますな」
「この辺りの賊や村や旅人を襲います」
「つまり貴殿の言う」
「はい、小者です」
それがその賊達だというのだ。
「所謂小悪党ですな、それがしが一番嫌いな者達です」
「してその小悪党達を」
「これより成敗するのですな」
「そのつもりですが」
「ではそれがしも。そしてそこでそれがしの働きを御覧下さい」
穴山は幸村に笑って言った。
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