4部分:第四章
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第四章
「あの方が王妃でしょうか」
「王の」
「何とっ」
その女性を見てだ。王は思わず唸った。何とだ。
「あの顔を見ろ」
「太めですね」
「そうですね」
「太いどころではないぞ」
かなり肥満していた。王が見て驚く程にだ。
「あれでは足の太さも相当なものだぞ」
「そうですね。おそらくは」
「かなりのものかと」
「ううむ、何ということだ」
王はその王妃の姿を見て額に汗さえ流していた。
「これは困った。あれがわしの后か」
「肖像画と違いますね」
「それも全く」
「しかもだ。あの顔はだ」
王妃のその顔を上から見てだ。王はまた言った。
「あれは十七の顔ではないぞ」
「ええ、流石にあれはです」
「十七ではないですね」
どう見てもそれより老けていた。女のことについては歴戦の王はだ。その顔から年齢を予測してみせたのである。
「二十七だな」
「二十七ですか」
「そんなところなんですね」
「十歳もサバを読んでおるぞ」
王は憮然とした顔で述べた。
「幾ら何でもやり過ぎだろう」
「確かに。十も違えばです」
「それはもう全く違いますから」
「その通りだ。また随分と無茶なことをするな」
王はその憮然とした顔で話した。
「全く以てな」
「そうですね。それでなのですが」
「どうされますか?」
家臣達はあらためて王に問うた。
「この御成婚」
「どうされるので」
「嫌なことだ」
これが王の本音だ。
「あの様な年増を王妃に迎えるのか」
「そして御子をもうけなければなりません」
「必ずです」
「ううむ。先が思いやられる」
王は頭を抱えんばかりであった。天井裏で嘆くことしきりだった。
「こんなことでは」
「しかし仕方ないのでは」
「こうなっては」
「わかっておる。それではだ」
その憮然とした顔を家臣達に向けての言葉だ。
「行くぞ。婚礼の場にだ」
「はい、それでは」
「今より」
こうしてだった。王は婚礼の場に向かった。そうして実際に婚礼の場で花嫁となる王妃を迎えた。その時の王はというとだ。
「ようこそ来られました」
優雅に笑ってだ。その太っていて年増の王妃を迎えるのだった。
「我が妻よ」
「有り難うございます。貴方がなのですね」
「はい」
言葉に威厳も含ませていた。王らしく。
「貴女の夫となる者です」
「それでは。私達はこれから」
「生涯二人です」
離婚を認めないカトリックの教理に従った言葉だ。
「それで宜しいですね」
「是非。それでは」
「こちらへ」
こうしてだった。何でもないといった態度で婚礼を迎えるのだった。そしてその後初夜も終えてだ。あらためて家臣達に話すのだった。
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