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とんだ花嫁
2部分:第二章
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第二章

「それではだ」
「はい、それではです」
「お相手ですが」
「それは誰だ?」
 王妃を迎えることになった。そのうえで次の問題はこれだった。王妃にするのを誰にするか、現実の問題であった。
「それで誰にするのだ?」
「そうですね。イタリアに縁を作りたいですし」
「ここはメディチ家にしますか」
「それでどうでしょうか」
「あの家か」  
 メディチ家と聞いてだ。王はまずは考える顔になった。
 そうしてそのうえでだ。こんなことを言い出した。
「あの家とは前に縁組していたな」
「はい、よく覚えておられますね」
「その時のことを」
「忘れるものか」
 王の顔が歪んできた。嫌なことを思い出す顔だ。
「カトリーヌ王太后のことはな」
「あの方のメディチ家です」
「あそこです」
「止めた方がいいのではないか?」
 王はその顔で玉座から家臣達に話した。
「あの時みたいにならぬか」
「あの時ですか」
「あのかつての時ですね」
「思い出したくもないことだ」
 王がここまで言うのには理由があった。そのカトリーヌ、カトリーヌ=ド=メディチはヴァロア家のアンリ二世の妃であった。その彼女が夫の死後実験を握り新教徒の虐殺を招いたのだ。
 パリの至る場所で虐殺が起こった。所謂サン=バルテルミーの虐殺である。新教徒達だけでなくたまたま喧嘩をしている相手を殺す者までいた。彼女にしては新教徒との和解を進めるつもりがとんだ事態になってしまった。事件を起こしてから彼女は一転して虐殺を推奨していたとも言う。これまた開き直ったものだがそこからユグノー戦争というフランス中を巻き込んだ内戦まで再発するのだから酷い話である。
 このアンリ四世は元々新教徒でカトリックに改宗して王になった。その時にナントで勅令を出して新旧両者の対立を解消させている。そうした経緯からメディチ家と聞いただけで身構えてしまったのである。
「あれはな」
「ですがカトリーヌ様ではありません」
「しかもあの頃とは状況が違いますし。婚礼の持参金もかなりですし」
「それはわかっている」
 王もだ。わかっていた。しかしであった。
「だが、な」
「感情としてですか」
「どうしてもなのですね」
「しかしメディチ家以外にないか」
 一応念を押した。
「婚姻を結ぶのに最適なのは」
「ハプスブルク家は?」
「若しくはイングランドは」
「馬鹿を言うでない」
 どちらもだった。その名前を聞いただけでさらに不愉快になる王であった。
「あの二つは駄目だ」
「はい、それではメディチ家ですね」
「そちらになります」
「神聖ローマもスペインもイングランドも大嫌いだ」
 先の二国がハプスブルク家のものである。ハプスブルク家とはヴァロア家からの対立関係でありイングランド
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