第6話 襲撃
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土佐藩参事として多忙を極め、来年には九州へと出張のためにひと時の休息の為に後藤象二郎は屋敷へと戻っていた。
土佐勤王党事件もほぼ解決し、ほっとしていた。
「お疲れ様です、旦那さま」
象二郎の妻・磯子は象二郎の着物を脱がせながら労をねぎらった。
「うむ」
象二郎は不愛想に答えた。
土佐勤王党には煮え湯を飲まされた。
師である吉田東洋暗殺により任を解かれた。が、それにより、いろいろ勉強をすることができた。
山内容堂公が藩主になってからは参事にもなれたが、勤王党には憎しみさえ覚える。が、同郷の志士を処刑するこことはやはり胸を痛めた。
象二郎は着流しに着替え、ようやくゆっくりすることができた。
「お食事の用意をさせましょうか?」
磯子は象二郎に問いかけた。
「子供達は?」
「もう床についております」
「そうか」
事件はほぼ決着をみているが、残党が狙うのは勿論象二郎自身であり、家族である。
心配の種は尽きない。
「これこれ、そこの男」
町回りの同心が全裸の男に声をかけた。
5月とはいえ、夜はまだ少し肌寒い。まして、全裸である。不審に思わない人間はいない。
男は同心の呼びかけにも答えず、前を行く男に黙々とついて歩いていく。
「旦那が持てと言っちょるぜよ」
同心につき従っている岡っ引きが全裸の男の肩に手をかけた。その刹那、岡っ引きの動作が止まった。
「お、おい、どうした?」
同心が岡っ引きに手をかけると同時に岡っ引きはまるでその体がサイコロで出来ていたかのように崩れていった。
「ひぃやぁーーーーーーー!!」
同心はその無残な姿をみて腰を抜かし、悲鳴を上げた。が、一瞬のうちに上半身と下半身が離れていた。
「良かったじゃないか。着る物が出来て。フフフフフ」
前を歩く男が足を止め、男に言った。
男は着物を羽織り始めたが、上半身の着物はぼろぼろになり、意味を無くしてしまっていた。
「行くぞ」
前を歩く男は再び歩き出した。そして、下半身だけ着物を着た男もまたその男につき従い歩きだした。
象二郎は磯子の酌で酒を飲み始めていた。
「旦那様、今度はどちらへ行かれるのですか?」
全国を歩きまわり見聞も広げ学問をおさめた主人に問いかけた。
「うむ。今度は長崎、薩摩に行く予定だ。容堂公の命でもあるしな。それに、、、、、」
象二郎は言葉を飲んだ。
「それに?」
磯子は象二郎が飲み込んだ言葉が気になった。
「いあ、なんでもない。気にするな」
象二郎は心配そうな顔をしている磯子を気遣い酒を飲みほした。
(坂本竜馬。会えるかどうかわからん。きゃつは風のような男だからな)
象二郎は再び注がれた酒に口をつけた。が、その時、表門の方に大砲を打ち付けられたような大きな音がして、人が騒ぎ出している声が聞こえてきた。
「
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