能力主義
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は、一番は「体力が無さすぎる」ことである。とても書架整理なんて任せられない。やらせた瞬間、少女はほぼ間違いなく書架の下敷きになる。
司書たるもの、この屋敷中にある書庫の管理くらいはしなくてはならない。それには魔力だけでなく、それに伴った体力もある程度は必要だ。母親も、この点が懸念材料であると父親に言っていた。
どれほど体力が無いのか。それは今しがた転んだことで説明されたが、書庫前に着いたことでより明瞭に分かるだろう。少年は本を抱えているため、地下書庫の扉を開けられない。ただ大きいだけの木製の扉である故、子供でも頑張れば開く。だがしかし。少女が気を遣って扉を引こうとしても、扉は開かない。開く気配すらない。それは、押しても同じことが言えた。
「………姉さん。ひょっとして。」
少年が不安そうな表情で呟くと、少女はくるっと振り返った。
「ち…違うもん!いつもは開くもん!!転んだから、手が痛いだけよ!」
そう言って体を扉に押し付け、全体重を精一杯かけて開けようとする。すると。
「え、きゃぁぁっ!」
突然扉が開き、少女が書庫内に倒れこむ。扉の先には、先程書庫に入っていった彼らの母親がいた。
「大丈夫ですかレリーシェ!?」
血相を変えて、母親が少女の名を呼ぶ。レリーシェと呼ばれた少女は顔を上げ、
「だ、大丈夫です……お母様。」
と呟いた。そして、心配そうに少年の方を見る。大方、この次に何が起こるのかは少年も少女も分かっているのだ。
「アレン…。何故あなたが開けなかったのです?」
先程の少女を心配していた様子はどこへやら、無表情で少年に問いかけた。少年が弁解をしようとすると、少女がよろよろと立ち上がって少年と母親の間に立つ。
「アレンに本を運んでもらってたから、私が開けようとしたの。自分の意志で私がやったことなの。」
「あなたには聞いていません、レリーシェ。」
びしっと少女を牽制すると、目線を少年に戻した。
「大量の本を抱えていようが、体を押し付ければそこの扉は開きます。レリーシェが頑張っても開かないほど軽いことくらい、知っていたでしょう。だから、何故と聞いているのです。」
答えろ、という威圧を含んだ言葉に、少年は無言をもって返した。反論の余地もなければ、する必要もない。「立場の弱いもの」が何を言っても、この母親には無駄だ。
「それに、この子が転んだ時に怪我をしたらどうするのです。あなたではレリーシェの代わりなど務まりません。現に足を打ってしまったではありませんか。」
「そ、それは今のが原因じゃなくて……。」
再び少女が口を挟もうとする。しかし、今度は少年がそれを遮った。
「分かったよ、母さん。ごめんなさい。」
驚いた表情で少女が少年の顔を見る。それはそうだ、少女が足を打った場所は「エントランス」なのだから。
「あなたには、
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