暁 〜小説投稿サイト〜
バーチスティラントの魔導師達
能力主義
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

しかも、この屋敷に存在するのは「普通の本」だけではない。
フルビアリス家は「幻書」と呼ばれる強大な力を持つ魔導書をも収集している。名の通り本来は存在しないはずの書物であるため人間に渡らないように、またその力を利用するように。
幻書は自ら読み手を選ぶものがほとんどで、選ばれでもしない限り決して恩恵がもたらされることはない。
それ故に、フルビアリス家には代々書物管理をするための"司書"が存在する。"司書"は本に関する知識や自身の持つ魔力の量及び質で決まり、幻書達が直々に任命する。幻書側が強い魔力を好むため、強い魔力を持つ"司書"に惹かれるのだ。
何より本を愛し、本から愛される。それが、"司書"なのだ。
現在の司書は少年の母親。次の司書は………。
「やっぱり、姉さんかな。」
少年には姉が一人いる。極度の読書狂で、睡眠時間以外は書庫に入り浸っている。魔力も少年を凌いでおり、両親や古書店店長、さらには他の魔導師達からは「フルビアリス家の最高傑作かもしれない」とも言われている。故に母親は教育に熱を入れ、様々な書物が手に入り次第全て真っ先に姉に届ける。
それは同時に、弟である少年は全て独学で学ばなくてはならないということである。
元から家事が下手である母親に代わって家の管理を行いつつ、自分で魔法の勉強をする。それが、少年の日常であった。
大量の書物に囲まれて母親から直々に魔法を教わっている姉と、母親から許可を取って借りてきた本を用いて自ら勉強している少年。普通に考えれば、次代司書は少年の姉だ。

しかしこの少年の姉は、色々な問題を抱えている。

「きゃっ!?」
短い悲鳴と、ドサドサッという崩れ落ちる音。それらが聞こえた方向を見ると、金の長髪を持った少女が盛大に本をまき散らして転んでいた。少年が慌てて駆け寄ると、足音に気付いたのか少女が顔を上げた。
「姉さんっ!?何しようとしたの!?」
「う、ううぅ………。」
転んで手をついた痛みで、少女は蒼い目をうっすら涙で滲ませていた。
「昨日、読み終わっちゃったから…。」
くすん、と鼻をすすりながら少女はそれだけ答える。その言葉に、少年が半分呆れたような顔で周りを見渡した。
「……………これ、全部?昨日借りたのに?」
厚さといい大きさといい、普通の大人でもこれほどの量を「1日で」読み切ることはほぼ不可能である。そんな量の本を、今この少女は「1日で読破した」と言ったのだ。そして1人で持っていたのだ。読み終わった本を書庫に戻すために。
「…次から、僕を呼んでね。そのくらいやるから。」
「う、うん。そうする……………。」
ひとまず本を集めて少年がまとめて持ち、少女を立たせて書庫に向かう。何となく少女の歩き方がぎこちないのは、転んだ時に膝でも打ったからだろう。
少女が司書として問題があるの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ