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鎧虫戦記-バグレイダース-
第35話 剣は振り下ろす派?それとも薙ぎ払う派?
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俺の振り抜いた腕から“苦無(クナイ)”が投擲され
それは風を切るようにして音もなく
ホークアイの背中へと向かって行った。

『完全に油断している。当たったな‥‥‥』

 ガキィィィィンッ!!

『!?』

しかし、俺の予想はアスラの日本刀による
居合でものの見事に外されてしまった。
しかも、今の居合には焦りなどの
余計な感情が全く混ざっていなかった。
それが表す意味とは――――――――

『気付いていたのか‥‥‥俺の存在に』

こうなることをすでに読んでいたのか。
それとも、来る前から姿を見られていたのか。
どちらにしても、今の俺の位置がすでに
二人にバレてしまっていたのは事実である。

『だが、愚かな奴らだ』

こんなところに丁度良く人質を置いて行ったのだから。
俺の立つ木の下にはジェーンが横たわっていた。
彼女を人質に使えば、子供二人など簡単に押さえられる。

 ズザッ!

俺は木から降りて葉の散らばった地面に
力なく横たわっている少女の上体を起こし
首筋に“苦無(クナイ)”を突き付けた。
ナイフを使わないのは万が一の為である。

「これ以上こっちに来ない方がいい。
 仲間の首から血が吹き出るのは
 お前らも見たくはないだろ?」

二人は俺の方に歩いて来ていた足を止めた。
しかし、不思議と顔には焦りがないように見える。
‥‥‥‥‥気のせいだろうか。

「これで全員が抵抗すること無く捕まってくれれば
 俺もお前らを殺さずに済むからな」

出来れば、俺だって誰も殺したくない。
だが、抵抗されたなら俺もそれ相応の
措置を取らなければならなくなる。
場合によっては、不本意に相手の命を
奪ってしまうかもしれない。

 スッ‥‥‥‥

「動くなよ‥‥‥‥」

俺は懐から麻酔針を二本取り出した。
複数本の同時投げは今までに何度もしているから
今ではかなり正確に数か所を狙うことが出来る。
だが、もし何かの要因で間違って片方でも首に当ててしまったら
その場合はいかに"侵略虫"でも、死ぬ可能性が無いわけではない。
そんな事を考えながら、俺は針を持つ手を振りかぶった。

 ヒュヒュッ!!

鋭い二本の麻酔針が一直線に
二人の身体へと向かって行った。
変身している片方は腕の関節に。
変身していない方はとりあえず胴体に。
それぞれ適切な位置だろう。

 ガキキンッ!

アスラは俺の投げた麻酔針を二本とも
日本刀を使って弾き落とした。

「‥‥‥‥‥‥‥は?」

目の前の彼の行為に俺は焦った。
俺は今この女を人質を取っている。
俺はあの二人にだから動くなと言った。
なのに、あの少年は何でもないかのように動いた。

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