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恋姫†袁紹♂伝
閑話―大計略の舞台裏―
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漢王朝の腐敗、各地の飢饉、疫病、重税、増加する一方の賊達、このまま時が経てば生活苦から農民達は賊に身を堕とし。やがてそれを先導する者が現れ、自分達を虐げてきた漢王朝に牙を剥くために団結する。

――なるほど、理に適っている。殆どの者達には妄言にしか聞こえないかもしれない。
しかし荀家の才女である彼女には、袁紹の確信めいた言が理解できた。

――そして理解できるからこそ恐怖する。聞けば南皮で行われた政策『楽市楽座』は、大陸各地にわざと袁家の情報を流布するための物である。
 袁家で専門販売されている魚醤などは、各地を訪問する行商人達に優先的に売られ、その価格も割り引かれた値段である。彼等は袁家に気を良くし、南皮の善政も相まって大陸各地で賞賛する。
 荀ケがここに来るまでにも、袁家の高い評判をいくつも耳にしてきた。
 
行商人を利用した情報の流布、独占販売されている魚醤の利益、それら全てが数年後の策の布石だと誰が思うだろうか、又、漢王朝が力を失ってきているからと言って、そこまで大規模な反乱が起きると数年前から誰が予想出来るだろうか、

荀ケも漢王朝や周辺諸侯の腐敗については考えていた。しかし彼女が考え付いた策といえば、規律ある者が宰相となり諸侯達を取り纏めると言う。堅実で誰もが思いつくようなものであった。

しかし袁紹は違う。早々に漢王朝に見切りをつけ、まるで反乱が起きるのを『知っている』ように予想して見せ、それに対する対策を数年越しで準備している。あの漢の忠臣『袁家』の次期当主がである。

「この策は我が一人で考え付き、殆ど一人で推し進めてきたのだが……最近は限界を感じている。
 お主となら、この策をさらに効率良く出来ると思うのだが……どうだ?」

荀ケの目が好奇心で輝いているのに気が付いた袁紹は、ここぞとばかりに勧誘する。
 歴史稀に見る大計略、これに携わっていたとなれば史に名を残すのは確実である。
 彼女も文官として、軍師として、これを見逃しはしないだろうと袁紹は考えていた。

「……」

だが彼女の中に芽生えたのは、史に名を残すと言う欲求では無かった。
 ただただ目の前の男に思いを馳せる――

もはや予知に近い時代の先読み、策の準備を数年前から行える行動力、柔軟で斬新な発想、
そして今耳にした豪快で大胆な大計略――

全容を聞いたわけではないが、掻い摘んで聞いた中にも穴がいくつかあった。
 しかしそれは許容の範囲内であり、むしろ一人で考え付いた割には穴も少なく完成されていた。
 問題は、無駄を省きどこまで効率化できるかである。

もし彼女が、いつ頃から袁紹に魅せられていたのか聞かれれば、迷わずこの日を答えるであろう。

――そして彼女は袁家に正式に仕官した際に、この大計略の予算の算
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