4部分:第四章
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だ。頼朝はだ。憮然とした顔で妻に問うた。
「どういうつもりだ」
「どういうつもりとは」
「何故あの女を助けた」
このことをだ。政子に問うたのである。
「あの咎で首を討てたというのに」
「その必要がないからです」
政子はその頼朝にだ。落ち着いた声で述べた。
「だからです」
「必要がないというのか」
「女が、母が夫や子を想うのは当然のことです」
その女として、母としての言葉に他ならない。
「だからこそです」
「馬鹿な、その様なことは」
「女の想いは殿方にはわからないかも知れません」
このことは頼朝を見てだった。言ったのである。
「ですがそれでもです」
「それ故にああしたというのか」
「そうです。私はあの方と同じ気持ちです」
「義経を庇うというのか」
「さて」
政子はここでは本心を隠した。頼朝にはわかることだがだ。
しかしそれは最早言ってもどうにもならない。だから諦めてだ。
そうしてだ。また言うのだった。
「ですがあの方は討たれることはしていません」
「女として、母として当然の想いだからか」
「左様です。では宜しいですね」
「わかった」
仕方ないとだ。頼朝も遂にだ。
憮然とした顔で折れてだ。こう言ったのだった。
「ではいいだろう」
「有り難きお言葉」
政子は微笑み頼朝の決断、彼女がそうさせたものだがそれでもだ。彼のそれに礼を述べた。こうして静御前は彼女の想い、その命自身も救われたのだった。
静御前のことは今も伝えられている。夫である源義経への想いとそして我が子を失った悲しみのこともだ。彼女のその悲しい一生のことは知られている。その中にはだ。こうしたこともあったことも知られている。女の心がわかるのはまずは女だということもまた。
静御前 完
2011・12・26
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