リズ・ローランド
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ぴくりとも動かなくなったベートがいて、できていない。
「だが、暗黙の了解とは言っても、ルールだからね」
「今こそ、その固定概念を打ち砕くときなんだよ!」
「それで一緒に今まで保たれてきた平穏も打ち砕かれるように思うんだが」
と、自分がいないところで議論が交わされているのを呆然と見ていると、背後から肩に手を置かれ、
「会おうと思ってたらきっといつかまた会える……………と思う」
と声をかけられた。
その声は清流のように澄んでいて、見ずともそれが誰であるかわかった。
後ろを向くと、案の定、アイズ・ヴァレンシュタインがいた。
「は、はぁ、わかりました」
だが、その助言は霧を掴むような非現実的な内容でありながらも不思議と腹に落ちるもので、リズは返事に困った。
「ん」
と、その返事にコクりと小さく頷くと、アイズは背を向けて、ソファーを涙で濡らしているロキの方に歩み去っていった。
その時、背を見ていたリズにはアイズの小さな唇が「きっと会える」と動いたことには気付かなかった。
「うーごめんねー」
「わあっ」
そして、その背中を見ていると、再び背後から声を掛けられた――と同時に、抱き着くように首に両腕を回された。
「手伝うことができなくなったけど、応援してるからっ!」
その犯人は、言わずもがな、ティオナである。
「他人の恋路に首を突っ込むのは野暮だからね、ファミリアに迷惑がかからないかぎり、僕らは静観するよ」
「ロキもあんな感じだからな、きっとなにも聞こえていないだろう」
更にその後ろにフィンとリヴェリエが立っている。
「別に大丈夫ですっ!それより、腕を離してください!首が締まってます!」
だが、リズにその二人に返答する余裕がなく、必死に首に回されている腕をタップしている。
ティオナは『ぎゅうー』と抱きしめているつもりだろうが、冒険者随一の怪力を誇るティオナの『ぎゅうー』は、それこそまだ駆け出しのリズにとっては万力の如くなのだ。
『ぎゅうーメキメキっバキっ!』みたいな。
「かほっかほっ、フィンさんそれは…………いいっということですか?」
呼吸困難になっていることに気付いたティオナが「ごめんっ」と言って離れてから数秒息を整えるのに費やして、訊いた。
「いいっていうのは君とデイドラという冒険者の関係のことについてかな?」
「あっ…………うぅぅ…………」
自分がデイドラに気持ちを寄せていることを赤裸々にしていることに今更めく気付き、赤面して俯く。
「別にいいんだよっ!だから、頑張れ!応援してる!」
意地悪を言うフィンに代わってティオナが、びしっと親指を立てて答えた。
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