リズ・ローランド
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「デイドラの所属ファミリア訊きそびれちゃったな」
砂金を黒布にちりばめたような星空の下を、天を突くようにそびえ立つ白い巨塔を背後にリズは夜の賑わいを見せる大通りを歩いていた。
デイドラといたときの心を浮つかせていた熱がミネロヴァの一言で瞬間冷凍されて霧散したリズだったが、
「ふふっ、私は冒険者に向いてないことはないかも」
デイドラを助けたあの瞬間を思い出しては無意識に笑みを零していた。
それは、デイドラが短刀を弾き飛ばされ、ウォーシャドウの爪が彼の眼前にまで迫った瞬間――の数瞬前のこと。
デイドラが死んでしまうと思うが早いか、リズは手に持っていたナイフを脊髄反射的に投擲していた。
ナイフは投擲された刹那、まるで的外れの方向に切っ先が向いていた。
が、そのナイフは見えない力によって向きを変えていき、ついにはウォーシャドウの頭部に予め定められていた軌道を通るようにして突き立ったのだ。
これは他ならぬ、リズのスキルによるものだ。
その名も【絶対命中】
射撃や投擲の精度を高め、矢や投擲物に追尾能力を付与する。
このスキルが発現したのはつい今朝のことで、このことに喜び勇んでリズは単身ダンジョンに潜ったのだ。
だが、集団戦術のコボルトに翻弄された揚句、武器を破壊されて、デイドラに救われるあの時に至るのだ。
「それにしても、デイドラはあんなに強いのに名前は全然きいたことないな〜」
リズは空を見上げて言う。
「それに何か他の冒険者と違う感じした…………かな?」
そして、自分が彼のことを全然知らないことに気付き、
「よしっ、帰ったら皆に聞いてみよっ」
と、言うと、鼻歌が聞こえて来そうなほどに上機嫌にスキップをして大通りの人込みに消えた。
◇
「ほんま心配してたんやで、リズたんっ。やからうちをこないに心配させた罰としてこそばしの刑やーっ!フヒヒっ!」
「す、すいませんでしたーっ!や、やめてください〜〜っ!」
所属しているファミリア【ロキ・ファミリア】の本拠に帰ると早々、主神ロキに捕まったリズは、
「ほれほれ、こんなところやこんなところもこぞばすでー」
「ちょ、ちょっと!神様!そ、そこはこそばすところじゃっ、ひうっ!」
「ほ〜、そこはどこや〜」
「い、言わせな、ひぁっ!でくださいーっ!」
罰としてあんなことやこんなことをされていた。
あんなことやこんなことを出来る限り描写するならば、朱髪朱眼の女神、ロキに背後から組み付かれて、脇腹や脇下、胸や口にするのは憚れるところなどに手を伸ばされ、くすぐられていた。
「何があっても一人でダンジョンに潜らないことを約束するかい
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