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猫の憂鬱
第4章
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た。涼子のベッドで寝りゃ良いもの、何故俺のベッドで寝てる!と、毎日毎日安眠を妨害してやった。ソファに座ると我先にと膝上に乗り、人の気も知らず勝手に寝る。ええい、こちとらトイレ行きたいんじゃい。

――もう!キナ様!パパの部屋入っちゃ駄目って云ってるでしょう!なんで判んないの!お馬鹿しゃんなの!お馬鹿しゃん!キナ様お馬鹿しゃん!

書類をめちゃかちゃにしておいて、本猫は窓の近くで暢気に毛繕いし、ボコボコ怒るコウジをちらっと見ては、ネェ、と鳴き、自慢の体毛を手入れした。
誰が触ってやるものか!そんな策略には乗ってやらん!あたし綺麗でしょ?と見詰めれば万人が撫でると思うなよ、此の毛玉風情が!貴様のような長毛は、尻尾を排泄物塗れにし、胃に溜まった毛をえはえは吐いて居りゃ良いんだ!
其れを見て涼子がコロコロ笑っていた。

――パパが大好きなの、気を引きたいんだもんねぇ。
――ネェ。
――パパはお馬鹿しゃんなきな粉ちゃんは嫌いです!
――ネェ。
――……キナ様…、ホルホル…、毛っけサラサラです…
――あっはっは、大好きじゃん。よう、下僕。
――ネェ。
――はい、下僕です…

幸せだった、本当に。此れが雪村凛太朗の人生の代償だったとしても、幸せだった。
セイジが、目の前に現れる迄は。
二人が結婚した一年後、セイジが帰国した。
目の前に現れた時、足元が崩れる気がした。いいや、本当に、気を失った。目を覚ますと、目の前で涼子はセイジに陵辱されていた。顔面を紫色に腫らし、ぐったりする涼子をセイジは笑顔で犯していた。気を失っている時に殴られたのか、頭に鈍痛がした。

――涼子、喜べ、あの猫な。

釣り上がるセイジの口元は魔物のように醜く、聞かされた言葉にコウジは胃液を吐き出した。頬を胃液で濡らし、生臭い匂いに又吐き出し、酸に涙腺が刺激された。

――……外道…!
――お、お目覚めか。遅ぇよ、ばぁか、一回目出ちゃったよ。
――きな粉に何した…
――きな粉…、はは、うける。

細い左薬指は真逆に折れ曲がり、ソファの上で涼子は揺れていた。

――きな粉なんだろう?じゃあ、全盲にしねぇと、あのクソ猫、目ぇ見えてなかったんだぜ?
――きな粉…きな粉……

か細い涼子の声にコウジは身体を起こし、激痛を訴える頭を押さえ、猫を探した。我が妻より猫か…コウジは自嘲した。

――きな粉…、キナ様何処だ…、パパだよ…、きな粉ぉお…!
――ネェ……

逸そ、自分が殺されたかった。書斎でぐったりする猫に血の気が引いた。
何で毛が濡れてるんだ、何でこんな毛がゴワゴワしてるんだ、何で、何で……。

何できな粉がこんな目に遭わないといけないんだ……

感覚失せた手で猫を抱き上げ、白濁に変色する目元を見た。

――きな粉
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