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猫の憂鬱
第4章
―4―
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の模写をコウジが模写した。其れを毎日のように繰り返し、何時しか逆が起きた。
涼子が描いた漫画絵をコウジが模写し始めたのだ。
基本がコウジの漫画絵の模写だったので画風に大きな変化はなかったが、雰囲気が“青山涼子”になった。
コウジがドイツに来て八ヶ月後、其の事故は起きた。
車を運転していたのは、コウジだった。酒が入っていたのも間違いはない、唯、其れで事故を起こしたのだ、人身事故を。
思い切り人を跳ねてしまったのだ。
街灯も儘ならない暗い細道で、凄まじい衝撃とフロントに乗り上がった人間を見た。横に居たセイジも心臓がバク付き、コウジは顔面蒼白でハンドルを握り締めた。

――やって、しまった…
――馬鹿コウジ…、だから酒飲むのやめなさいって云ったじゃない…

二人は車から下り、道路でぐったりする人物に近付いた。腕が変な方向に曲がり、頭から血を流していた、息はあるもの、内臓いってるな、と呼吸の仕方で判った。
セイジは、一応三年迄だが、医学部に通っていた。

――此れはまずいな…
――やだ、捕まりたくない…、兄貴…
――そうねぇ…、僕も弟を犯罪者にしたくないなぁ…、あれ…?

呻く男を見るセイジは、蒼白する弟の顔を見た。
自分の中に息する悪魔が、盛大な息吹と共に生まれた瞬間だった。

――コウジ。
――何…
――交換しよう。
――はい?
――此奴、僕達そっくりだ。特に御前。

頭から血を流す男は、確かに自分達そっくりだった。空港に向かう途中だったのか、男の持ち物の中にパスポートがあった、免許証も現金も、日本行きのチケット全てが揃っていた。

――コウジ、逃げなさい。
――え?
――此奴として、逃げろ…

冷え過ぎて、指の感覚が無かった、其の手に乗せられたパスポートを開き、自分のパスポートを開いた気分だった。
顔が、余りにもそっくりだった、此処迄似なくても良いだろう?と鼻で笑った。

――雪村、凛太朗…
――良い?僕の話、良く聞いて。

君は今日から“雪村凛太朗”として生きる、僕がコウジとして生きる、死んだのは、タキガワセイジだ。

――なんで?え?なんで死亡者がセイジになるんだよ…、俺じゃ、ねぇの…?
――御前には、やって貰いたい事があるんだ。

涼子を、殺せ。

辺りに煙草の匂いが充満した。
薄暗い空間で煙草の火だけ、浮きだった。

――いや、直接殺すのは僕がしよう、財産と息子…、自然な形で僕が受け継ぐ…。勿論君には、毎月幾らかあげるよ、不自由無くね。君は今から、雪村凛太朗として日本に行って貰う。彼が何の為にドイツに来たか、日本で何をしているか判らないけど、名刺があると思う。まあ、良い、無断欠勤でもなんでもして、でも携帯電話には出て、其れで上手く情報引いて。其れで君が出来
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