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猫の憂鬱
第4章
―4―
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何?
――御前、一寸代わりに描いてよ。
――は?
――だって僕、漫画なんか描けないし。
――いや、僕だって、漫画なんかもう描けないよ!
――だって、此の絵って、コウジのだろう?僕、覚えてるもん。だから最初、コウジが描いてるのかと思った。やっぱ涼子が描いてたのか。
――…其の話は、僕から、涼子に云ってみる…
――本当?有難う。焦ったぁ。

肉の無い頬に皺を作りセイジは笑い、三人部屋だが、現在はコウジ一人しか入院していないのに、態々区切りのカーテンを引いた。

――本題ね。
――うん。
――涼子と離婚して。

我が耳をうたぐった。理由は判る、全く赤の他人の雪村凛太朗が夫の儘だと、如何転んでも涼子の金はコウジに行く。
詰まり、そういう事である。
そんな提案に、殺される為に涼子を差し出す程コウジは涼子に非情では無い、寧ろ、愛している、今更邪魔するな、もう諦めろ、と啖呵切った瞬間、首の圧迫感と息苦しさを覚えた。カーテンを閉めたのは、何時ドアーが開いても良いようにである。

――誰に口聞いてんだ、あ?
――離……
――御前は、俺に従っときゃ良いんだよ。
――絶対…嫌……、涼子は、渡さないから…
――あの女に惚れてんの?
――煩い…
――御前、めでたいね。御前が入院してる間、涼子が何してるか知ってんの?
――煩い……!
――御前の手に負える女じゃねぇんだよ、あの淫乱は。死ぬ迄治んねぇぞ。

愛して居たのは自分だけだったのか、涼子を愛するなんて馬鹿げた話なのか、無意味な事なのか。
俺の人生って、なんだろう。

――良い材料揃ってんじゃん、凛太朗さん。

コウジの泌尿器科の診断書を見たセイジは、ゆっくりと笑った。
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