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猫の憂鬱
第4章
―4―
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た。
言い方悪いが、不良が不良に喚いているとしか思えない状況で、コウジは、流石に其れは青年が可哀想だから、SLKの新車は絶対に無理ですがゴルフ位なら…、と信じられない事にコウジが対向車であったゴルフを新車で賠償した。あんた何処迄馬鹿で善人なんだ!?と云われはしたが、如何考えたって、如何見たって、申し訳ないが、青年両親にそんな財力があるとは思えなかった。SLK所有者の派手女には、中古でも良いですか?と一応聞いては居たが、なんで一番の被害者の貴方が買うの、此の阿保に買わせるから、とヒステリックに喚いた。常識考えろ、と青年と青年両親に喚かれていたが、其の後は知らない。其の女が用意した弁護士で、話は片付いた。
コウジは三ヶ月程入院し、楽しい入院生活ではあった。三人は同じ病室で過ごし、二人は一ヶ月程で退院したが、楽しくも怖かった。
常に二人は青年の悪口を言い合い、ワーゲン親父の鼾が煩い事煩い事、其れに派手女が、オッさん、序で鼾の治療もして貰い、と云う。
動けるようになった二人は松葉杖付き付き、態々毎日青年の病室に行っては嫌味を放ち、一時間程暇を潰して居た。
ワーゲン親父の妻は、女好きの治療もしたら、と派手女の笑いを誘っていた。迎えには行けなかったが、退院した涼子も、コウジの世話をしつつ小さく笑う。
何が怖かったか、派手女の見舞客である。一度、父親らしき男性が、泣きながら派手女を抱き締めていた。其の後ろに、皺一つないスーツを着た怖いお兄さん二人が直立不動で立っていた。コウジもワーゲン親父も、嗚呼だからあんな高級車であんな啖呵切れたんだ、と納得した。
派手女の世話は専ら、ステンレスみたいな怖いお兄さんがし、週に一回、夫らしき人物が来た。言葉が痛烈で、ベンツ諸共廃車んなったら良かったのに、しぶといの、メシマズ治る迄帰って来んな、と何をする訳でも無く、唯々嫁に暴言を吐き、だのに派手女はヘラヘラ笑っていた。
二人が退院した後、事故から二ヶ月後、病室に現れたセイジにコウジは氷結した。猟奇的な成人限定の同人誌を持って。

――何?此れ…
――此れ、御前が描いたやつ?
――え?
――其の作者の名前、見てご覧。

同人誌をコウジに渡したセイジはパイプ椅子に座り、細長い足を揺らした。其の口調は、タキガワコウジを演じるものでは無く、知っている兄の話し方だった。
タキガワコウジ…、然し自分は一切描いた事は無い、何故こんな物が自分の名前で出回っているのか理解出来なかった。
唯、誰が描いたかだけは、はっきり判った。此の雰囲気は明らかに涼子だった。
セイジが何故こんな物をコウジに渡したか、“タキガワコウジ”と名乗るセイジの元に出版社側から連絡が来たのだ。
涼子がどんな意図があって“タキガワコウジ”の名を使い、如何わしい冊子を作ったかは判らない。

――で、
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