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猫の憂鬱
第4章
―4―
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階段を転げ落ちた。床に広がる薄まった血液に涼子は笑っていた。

――大丈夫?涼子。生きてる?
――うん、大丈夫…、一時間、じっとしとく…、一時間経ったら救急車呼んで…

大きな音に猫が何事かと現れ、生臭い臭いに鼻を動かし、コウジが呼ぶと、涼子が転げ落ちた階段を登り、腕に収まった。指示通りきっかり一時間後コウジは救急車を呼んだ、血の気引かす涼子を抱え、救急車が来るのを待った。
空っぽになった腹に手を乗せる涼子は、病室の窓から雲を眺め、溜息を吐いた。

――一時間激痛に耐えたのに死ねなかったわ。

病室は、もう暖房の入る時期だった。背中に汗が浮き、ジャケットを脱いだ、涼子は笑顔で其れを羽織り、ベッドに寝た。翌日涼子は産婦人科の病棟から精神科の病棟に移った。
自宅と職場と病院の往復で、コウジの一日は終わった。帰宅した時には疲れ果て、風呂にも入らず寝た。
そんな生活が半年近く続き、漸く涼子が退院するとなった其の日、事故は起きた。
病院に向かっている最中、ウィンカーも出さず車線変更した車と衝突し、後方車から追突された。追突された衝撃で車は横向き、対向車線にはみ出た車体後方に対向車が衝突した。
コウジの乗っていた車は、車って此処迄凹むんだ?という具合に鉄屑と化し、命があるのが不思議だった。
一番重症だったのはコウジで、死亡したのが事故の発端である軽自動車を運転していた十代の青年の運転席後部に座っていた中学生の少女だった。無理も無い、六十キロ近い速度の車に追突されたら、車体の軽い車の被害は大きい。最悪な事に、後部座席に座っていた少女はシートベルトを着用して居らず、ドアーに凭れていた。横にも少年が一人居り、追突された衝撃で少女に激突している。
現場検証した刑事は、素直にコウジに同情した。なんというか、青年達の親が見事な迄の支離滅裂さを発揮し、死亡した少女の親がコウジに賠償を求めると言い出した。確かに追突し、死亡させたのはコウジであるが、発端は青年の無謀運転と少女自身のシートベルト無着用である。其れでも慰謝料を払わなければならないのだろうかと同情した。
運が良かったのは、コウジの車に追突した後方車と対向車の運転者が青年両親を訴えた事だった。
俺見てだぞ、其の白い軽がぎゅん!って動いて、後ろが追突した!だからクソガキが悪い!
あたしも見てたわ!ライフが車線変更した瞬間、前のアウディが急ブレーキ掛けよったわ!ウィンカーなんか出してなかったわ!絶対!左ハンドルだからよぉ見えんのよ!如何してくれんのよ、あたしのベンツ!あんたの軽とは違うんよ!?SLKよ!?あんた買えんの!?いいや、買って貰うからな!今直ぐ買いなさいよ!
アウディの兄ちゃん可哀想じゃねぇか!御前みてぇなクソガキにやられてよぉ、俺のゴルフも買い直せよ!
そう、青年の病室で喚いてい
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