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猫の憂鬱
第4章
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けば群がられた。
涼子が二十七歳の時、子供が出来た。
涼子には、其れがセイジの子供で無いのは判っていた、判り切っていたのに、産んだ。
セイジは薄く笑うだけで、何も云わなかった。抑に会話が無い夫婦で、息子が生まれた一番最初の会話が、誰の子?――さあ、だった。
涼子はカンバスと猫にしか興味が無い、だからセイジが面倒見るしかなかった。
涼子が二十九歳、息子が二歳の頃、父親の早雲が没した。
セイジは、笑った。やっぱり見捨てなくて良かった、誰の子かも判らない息子を育てていて良かった、神様からの御褒美だ……そう、涼子が相続した遺産に笑った。然し涼子は冷淡な表情で、そうですか、とだけ呟き、相続手続きをした。

――涼子…?
――セイジさん、好きに使って良いわよ、私は自分で稼いでるから。使い切って良いわよ、唯、二億だけ息子に残しておいて。口座は日本でね。何れ日本に戻るから。

涼子の要求は其れだけだった。云われた通りセイジは日本の口座に二億置いた、其の手続きをしたのが、セイジの弟、コウジだった。

――何其の女、馬鹿なの?
――ううん、馬鹿というか、金に執着が無いんだよねぇ。
――兄貴だけずるーい、僕もお金、欲しいなあ?
――はは、じゃあドイツおいでよ、一年は遊んでたら?御前、どうせなぁんもして無いんでしょう?
――そうそう!俺、絶賛ニートよ!おふくろ、チョーうるせぇの、親父もうるせぇよ。何の為に慶応出したと思ってんだ、って。
――威張んな、馬鹿…

葵早雲の死後から半年後、コウジはドイツに来た。セイジは三十一歳、コウジは二十五歳だった。

――実際さぁ。

買ったばかりのポルシェを運転しながらセイジは云った。

――僕、元から物欲って無いんだよね、気付いたけど。子供の頃から憧れだったポルシェ買っただけで、何も変わってないなぁ。涼子はあんなだし。
――変な女だよなぁ。

タキガワ兄弟は、似ていたが、似ていないと云われたら似ていない。実際、兄のセイジは細長く、弟のコウジは体格が良かった。セイジが筋肉付ければコウジに似るし、コウジが痩せればセイジに似た。

――兄弟でも、体格は似てないんだね。こっちの方が好きかも。筋肉質な人、好き。

涼子は云い、ドイツに来て一週間でコウジはあっさり涼子と寝た。
最初は抵抗した。
涼子に押し倒された時、運悪くセイジが帰宅し、気不味い雰囲気になった。けれど涼子もセイジも全く無関心で、セイジはたった一言こう云った、涼子、名器だよ、と。
はあ?と思ったが、つまりそういう病気なんだ、とコウジは諦めた。
コウジは無職で、なんのやる気も無い性格だったが、幼い頃から漫画絵だけは描いていた。リビングで其れを見付けた涼子は、もう少しこうした方が良いわね、とコウジの画風を模写し、修正された其
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