第77話 男のジェラシーは見苦しい
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いちゃダメだよぉん」
その一言で銀時はその場に釘付けにされてしまった。下手に動けばどうなるか、それは火を見るよりも明らかであった。
「さぁ、それを抜いて貰おうか。でないと、お嬢ちゃんの頭がそっちに飛ぶ事になるかもよぉん」
「てめぇ―――」
苦虫を噛み潰す程の力で銀時は歯噛みした。怒りが喉元まで出かかっていたのだ。しかし、動く事は出来なかった。岡田は銀時の跳躍力を計算して距離を開いた。
今二人の間の距離はおよそ20メートル近くある。例え銀時が跳躍した所で、それよりも早く岡田はなのはの首を跳ねられる。二進も三進も行かない状況を作り出されてしまったのだ。
「どうしたんだ? 早く抜いてくれよ。折角の得物も使わなかったら勿体ないだろう?」
「くそっ!」
舌打ちし、銀時は再度白夜の柄に手を掛けた。そして、再度白夜の刃を抜こうと引っ張る。
刃が根本から数センチ出た辺りだっただろうか。其処で白夜はピタリと止まってしまい、その場から動かなくなってしまった。
まただ、また抜けない。何度も必至に引き抜こうと試みるも結果は同じだった。幾ら引っ張ってもそれから先が出てこないのだ。
「おいおい、遊んでるのか?」
「うっせぇ! 黙って見てろ!」
顔面汗でびしょ濡れになりながらも必至に白夜を引き抜こうとする。全身全霊の力を込めては見たが、それでも白夜はびくともしない。全く微動だにしないのだ。
(何処まで反抗期なんだよ。せめて反抗する時ぁ空気を読んでやってくれよ。今はそんな状況じゃねぇんだ。頼むから、俺に協力してくれよ、白夜!)
次第に銀時の中で焦りの感情が芽生えて来る。自分一人の命ならば特に焦る事はない。だが、今は違う。一人の尊い命が掛かっているのだ。
それも、今まで銀時自身が大切に育んできた大切な命が―――
「もう良い。あんたには失望したよ」
深いため息を吐き、とても残念そうな顔をしながら岡田は呟いた。俯き、肩を落としている辺り心底残念そうにも見える。
その残念そうな表情と言葉が、銀時の肝を凍り付かせてしまった。
「何? どう言う意味だよ」
「もう良いって事だよ。あんたとやりあってた時は最高に楽しかったけど、今のあんたはまるでやる気を感じないや。それだったら、少しでもやる気が出るようにしてやろうかねぇ」
そう言うと岡田は紅桜の刃を思い切り振り上げた。狙いは銀時じゃない。岡田が狙っているのは、岡田の手の中で眠っているなのはであった。
「待て! 待てこらぁ!」
「今更後悔したって手遅れさぁね、恨むんなら臆病な自分を恨むんだな」
銀時の静止を無視し、岡田は紅桜を一切迷う事なく振り下ろした。眠っているなのはの顔面に向かって。
「止めろぉぉぉ―――」
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