6部分:第六章
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第六章
最高裁でもだ。誰もが確信していたのだった。
「世論なんか無視するに決まっているんだ」
「権力を使って実際に人種差別を遂行した男だぞ」
「今回も権力を使ってやるさ」
「何であんなのが最高裁の長官だ」
「法律家であること自体が合衆国の恥だ」
相変わらずだった。誰もウォーレンを信じようとしない。しかしだ。
ウォーレンはその中でだ。動きだした。何とだ。
人種分離政策に賛成する者はおろか反対する者に対してもだ。個別に電話をかけだ。家や執務室を訪問してだ。そのうえでこう言ったのである。
「人種分離政策は間違っている」
「あの政策は終わらせなければならない」
「どうか私の判断に賛成して欲しい」
「ブラウン氏への判決は人種分離政策の誤りと判断する」
「どうかこのことをわかって欲しい」
こうだ。自ら出向き話してきたのだ。それを聞いてだ。
誰もがまずは耳を疑いだ。そのうえでだ。
彼をあからさまに侮蔑する目で見てだ。こう言ったのである。
「御前がそんなことを言うとは思えない」
「一体何の謀略だ」
「何を企んでいる」
「クランと組んで謀略でも行っているのか」
「我々を騙すつもりか」
こう言ってだ。誰もが彼を信じようとしなかった。
そしてだ。彼を門前払いにするか強制的に帰らせた。しかしだ。
ウォーレンは彼等を何度も何度も、幾ら追い返されても訪問してそのうえで人種分離政策の解消を訴えだ。自身の判断の妥当性を説いた。人種差別政策の誤りをだ。
誰もが中々信じようとしなかった。全くだ。しかしだ。
一人がだ。まず自分の前に何度も来ていた、今も来たウォーレンにだ。こう言ったのである。
「私もあの政策は誤りだと。法律的にも人道的にも確信しています」
「では」
「貴方は信じません」
ウォーレン自身に対してだ。このことは断言した。
「ですがそれでもです」
「私の判断はか」
「信じましょう」
こう告げてなのだ。彼が最初にだった。
人種分離政策に反対するウォーレンの判断を支持した。それからだ。
一人、また一人とだ。ウォーレンの言葉に頷いた。そうしてだった。
連邦政府最高裁としてだ。ブラウン氏の申し出に対して判決を下した。それは。
おおむねにおいてだ。こうしたものだった。
「ブラウン氏の要求を認める」
即ちだ。人種分離政策を誤りだと判断したのだ。
それもだ。ウォーレンを含めた最高裁判事の全員がだ。こう判断したのだ。
これを見てだ。誰もが唖然となった。
「何っ、全員だと」
「全員が人種分離政策は違憲だというのか」
「しかもあのウォーレンがか」
「あいつまでもが」
そのだ。人種差別主義者のウォーレンさえも違憲と言ったことこそがだ。最も驚かれることだった。
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